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●人材が払底する日本

一一月の終わりに高知県知事選挙があって、橋本大二郎がけっこう苦戦したあげく四選を決めたけど、田中さんも彼の応援に行ったんでしょ。
うん、総務省出身で高知市長をやってたのが対抗馬として担がれたからね。橋本が落ちて旧来型の官僚出身者になったらまずいでしょ。だけど、実は橋本サイドに建設業協会がくっついてたりもしたんだ。それで四万票程度の差なんだから、圧倒的に信任された訳じゃないんだね。
橋本県政の一二年間って実は余り変化を与えていないんだよ。全国の県のなかで医療費がいちばん高くて、それなのにいちばん短命で、病院は小さな町に行っても私立の民間総合病院がある。橋本は結局ダムも造り続けてるしね。だから高知の一部の市民は、田中がなぜ橋本の応援にくるんだと首をひねってる(笑)。たしかにそうなんだけど、全国の人は彼を改革派の先駆けと思っているから、橋本が落っこちて喪・無能省出身者になるのは、ちょっとね。
ところが、本人がそのあたりを自覚してないのかな。演説に集まったおばちゃんたちに自分から握手をしにいかない。向こうから来るもんだと思ってる。だから、知的かもしれないけど、市民との間に距離があるんだよね。
高知の選挙と同じ日に大阪の市長選もあったけど、こちらはひどい結果だった。
助役だった関淳一って人物が自民、民主、公明、社民の相乗りで当選した。なんで大阪みたいなところが八代も続いて助役を市長にするんだよ。大阪人たるもの恥を知れってことでしょ(笑)。
塩爺が安藤忠雄を口説いたらしいんだけど、あんな世界的建築家が大阪市長選ごときに出てくれるかっての(笑)。
だから僕は、やしきたかじんに出ろと言ってたわけ(笑)。ホントのところ彼みたいな人間がやったほうがいいんだよ、あの街の場合。
赤字まみれで特定調停の手続きに入ってる南港の第三セクター事業に象徴されるように、大阪市長は債務返済と財政再建が主要な仕事なんだから、そういうバブリーな事業の最大のアイディア・マンだった堺屋太一あたりに責任をとって市長をやってもらう手もあったかも。
鋭い意見だ(笑)。

大阪は二月に府知事選挙も控えてる。民主党の江本孟紀が自民党の若手の要請を受けて出馬表明したりして、いったいどうなってるんだ?
現職の太田房江もけっこうやばいと思うよ。政党の推薦を受けるかどうかで迷走劇をやっちゃったからさ。
無風選挙だと思ってたんで政党の推薦を受けずに無党派で行くって言ってたら、江本出馬で雲行きが怪しくなってバタバタしちゃったわけだ。
最初は推薦をもらわないと言ってたのに、突然自民にぺこぺこ頭を下げるようになっちゃった。そりゃ大阪人からすると「アホか、このおばはん」という話になるよ。
自民党府連の大会で太田が「ご支持をよろしくお願いします」と挨拶して降壇したら、府連の会長で衆院議員の柳本卓治ってのが「推薦をお願いします、と言え」と耳打ちして、それでまた太田が壇上に上がって「ご推薦とご支持をよろしくお願いします」と。そんなバカなことを丸見えでやってるわけよ(笑)。ところが、府連はもともと野中広務の探してきた太田が気に入らなくて、若手が江本を担ぎ出したくらいだから、そこから推薦を正式決定するまで何日もかかってるわけ。
元通産官僚の太田は単に何かポジションにつきたかっただけのおばさんなのかな。
そういう意味ではそんなに害もない。
そりゃそうだ。
逆に江本じゃダメでしょう。いくらタイガースが優勝したからと言っても(笑)。
もちろんだよ。逆に役人にとっては江本のほうがやりやすい。何かの事業を一つか二つ中止して改革派の「実績」を演出しておけば、こんなに御しやすい人物はいない、と思ってるんじゃないかな。
しかしなんでこんなに人材が払底しているのかね、日本には。
知力とセンスだけじゃなく、よっぽど体力も気力もないと務まらないよね。田中康夫のような人はめったにいないんだよ(笑)。
いやぁ、その田中康夫を引き摺りおろさねば、僅か一ヶ月前に出馬表明した民主党の篠原孝に僅差で逃げ切った小坂憲次が次の総選挙では危ないと、小坂一族が大株主の信濃毎日と、支局長以下若手に至るまで反田中で意志統一の朝日の長野支局(苦笑)は今や連日、田中バッシング記事で「『脱ダム』宣言」当時を思い出すよ(爆笑)。岡田克也よりも官僚的で頭が古い長野県の民主党県連も、なんで田中が民主党を応援したんだ、と怒ってるらしいから、他県の市民には理解できないだろうね、山国の閉鎖性や嫉妬心は。
●スペインで見た豊かさ

総選挙が終わったあと、スペインのビルバオに行ってきたの。グッゲンハイム美術館を見てね(http://www.guggenheim-bilbao.es/idioma.htm)。フランク・ゲーリーのあの建物はよくできてると思ったよ。
良くも悪しくも世界一スペクタキュラーな張りぼて建築って感じだね。最近ロサンゼルスでゲーリーの設計したディズニー・コンサートホールがオープンして話題になってるんだけど(http://www.musiccenter.org/wdch/index.html)、本当はそちらのほうが先に計画されてたのに、後からスタートしたグッゲンハイム美術館ビルバオ分館が先にできちゃったんで、今さらディズニーを見ても改めて驚くことはない。いずれにせよ、いかにもアメリカ的な奔放な想像力の産物ではある。
どんな建物でも巨大になれば違和感があるんだけど、それをあまり感じさせない。チタンを使ってあれだけのものをつくるってのはたいしたもの。あと、建物の前にパンジーで覆われた巨大な番犬がいるのも、ある種の思考停止状態とはいえ面白いわけでさ。
ああ、ジェフ・クーンズの犬ね。
で、美術館全体を一五〇億円でつくってるんだよね、当初の収蔵品も含めて。松本市の市民会館も同じ一五〇億円なんだよ。それで伊東豊雄の建築にセゾンの残党の串田和美が館長ってどういうことよ(笑)。同じ金額で向こうはあれだけのものをつくって世界中から人が来るのにさ。
で、観に行ったときはちょうどジャン・デュビュッフェ展をやってたの。それ以外の展示品はモダン・アートなんだけど、そのなかに何やら日本の暴走族からキャバクラ嬢になったようなお姉ちゃんの写真をいっぱいコラージュした作品があるわけ。何かと思ったら森万里子の作品でさ、もう勘弁してくれよって感じ。絶句したね(笑)。
まあ、六本木ヒルズの森美術館でも、そのうち森万里子展をやるでしょ。
あと、ビルバオでけっこう見落とされてるのは、グッゲンハイム美術館の敷地がもともとひどい場所だったってこと。河川敷で橋や鉄橋が入り組んで荒れ果てた場所だったのを、あえてド派手なポストモダン建築をもってくることで一気にショウ・アップした。橋の向こう側まで建物をのばすとか、ゲーリーもなかなかうまく考えてると思うよ。ああ見えて、たんなるお遊びじゃないんだ。
もともとビルバオは日本で言うと北九州みたいな感じの重工業都市で、斜陽の一途をたどってたのを、グッゲンハイム美術館を誘致することで、周辺地域のみならず、都市全体を活性化するのに成功した。観光客も激増したし、都市環境もよくなったし。
コンヴェンション・センターみたいなものもできてきてね。それにミラノとかストラスブールみたいに路面電車を復活させてるんだけど、路面敷に芝を植えてるんだよね。きれいに刈り取ったものじゃなく雑草みたいな芝でさ。同じことはストラスブールでもやってる。いいよね。それ自体で地球温暖化を防げるわけじゃないけど、人間の心を覚醒させるわけだよ。これこそ意味のあるパフォーマンスだと思うな。
もう一つ興味深かったのは、ビルバオってやたらと道路をゴミ清掃車が走ってるんだ。それがドイツのデザインだと思うんだけど、丸みを帯びててすごくきれいなの。ゴミ箱にもシンプソン・ファミリーの絵が描いてあるわけ。長野県もそれを参考にしてやろうと思ってさ、絵は安齋肇にでも頼んでね。だいたい日本の清掃車っていかつい感じの車でしょ。だから、道路清掃イコール汚いってイメージなんだけど、向こうじゃ全然そんなことないわけ。車とか機械だって景観の一つなんだから、そういう観点でやらなきゃ。単に値段が安いという話でいくと、みんなトヨタの車になっちゃうんだよね。
お洒落なデザインだったら、ゴミ箱だってもっとたくさんあっていいと思うよ。ゴミ箱がストリート・ファニチャーというか、さらにいえば彫刻になってればいい。汚いものだから隠しておこう、最低のコストですまそうってのは間違ってる。
ただ、ビルバオはバスクだからスペインとは思えないくらい早くレストランがしまっちゃうでしょ。まともなレストランっていえば近くのサン・セバスチャンまで行かないと。

そう、サン・セバスチャンの去年から三つ星になったマルティン・ベラサテギで食事をしたの。最近はバスクでも、少し値段の高いレストランは一〇時過ぎないと客が来ないんだね。それで街の中も、六時を過ぎるとやたらと子供連れやベビーカーを引いた人が出てきて、もう暗いのに公園に集まって話をして、さらにはバーでピンチョスをつまみながら、道路にまであふれ出して盛り上がってるんだ。やっぱり向こうに行くと、豊かさとは何かというのを確かに感じるよね。
で、最後に訂正を。改革知事特集を組んでいる年末年始号の「週刊ダイヤモンド」は、巻頭で「続・憂国呆談」を載せているからバランスを取ったのか、田中康夫に記事中では一言も触れていないのはご愛敬として、一覧表で知事の給与を記載している。何とデータが二〇〇二年に総務省が発表した古い数値。長野県は四割カットで全国で一番低くて、土日も含めて一番働いている知事だぜ。少しは評価して欲しいもんだね(苦笑)。
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