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●自律分散というヴィジョン

本誌でも述べた自律・分散・多様の原則は個人にも言えるわけ。つまり、できればスタンド・アローンでやれるってのが理想なんだよね。たとえばパソコンの常時接続ってのがいいのかどうか。本当は常時接続“可能”がいいんだよ。つなごうと思えばいつでもワールド・ワイド・ウェブにつなげるけど、切ろうと思えばいつでも切れる、と。
そうでないと、受け手として固定されているテレビ視聴者と変わらない。それに、だいたい常時接続なんてことは、地球環境の時代にそぐわないとも言える。電気ばかり消費してさ。
セキュリティ面から言っても、常時接続してりゃ、ウィルスの感染も止められない。このあいだ世界中を騒がせたコンピュータ・ウィルス「MSブラスター」には、僕のモバイル・マシーンも感染しちゃったけど(笑)。
ほんと?
すぐ駆除して、すぐパッチを入れたけど、必要なソフトをダウンロードして実行するだけでも手間がかかる。しかも、それさえできないユーザーがいるんだからね。これって早い話がマイクロソフトが欠陥商品を売ってたわけでしょ。たしかにウィルスをつくってばらまくのは悪質な犯罪だけど、データを消したりするわけじゃなく、ちゃんと「あと六〇秒」という予告まで出してシャット・ダウンするわけだから、過激な消費者運動とも言える。セキュリティに関して穴だらけの商品を売るな、と。
パソコンに関してはPL法はどうなってるのかね。パソコンメーカーやOSメーカーは社会的責任を果たしているのかってことだよ。

問題は、パソコンをあたかも誰でも使える家電製品みたいに大量販売してること。あれは実際はほとんど未完成品で、常に新しいソフトをダウンロードして更新する必要がある厄介なシロモノなんだよね。それを「誰でも手軽に使えます」みたいに喧伝してる。TVや洗濯機が同じくらい頻繁にダウンしたらどうなることやら。
この八月にアメリカとカナダで大停電が起きたときも、料理店は冷蔵庫で腐ったものの損害賠償を請求すると言っているわけだからさ。
あの大停電を見ても、やっぱり自律分散系を目指す必要があるね。二一世紀は、巨大インフラに依存せず、それぞれの家で電気でも何でもできるだけスタンド・アローンでやるのが理想だと思う。とはいえ、それは未来の話で、今は二〇世紀型を引きずって巨大インフラに依存した社会に生きてるわけでしょ。だとすれば、それはある程度パブリックに維持していかざるをえない。アメリカみたいにやたらと自由化して、三〇〇〇社もの電気ディーラーが価格競争してたら、そりゃ送電線の維持に金なんか使ってられないってことになるよ。日本の電気料金が高いのは問題にせよ、二〇世紀型巨大インフラを安心できるかたちで維持するためには、あまり過激に自由化して効率化一本槍でいくのはまずいんだ。むろん、代替エネルギー会社がどんどん参入できるようにするといった、いい意味での自由化は進めるべきだけどね。
かつては円高差益を還元して電気代を下げるとかよくあったじゃない。でも一世帯当たり一〇〇円とか一〇〇〇円なんだから、その金を福祉とか他の有益なことに使わせりゃいいの。電気会社にそういう社会的責任を負わせれば、単なる民営化よりずっと意義がある。
代替エネルギーの開発費に回すとかね。
そう。そのほうがよっぽどいい。
しかし、アメリカほどの「先進国」であの大停電だからね。もうほとんどイラクに近い状態だよ(笑)。
かつて起きたカリフォルニアでの電力不足の教訓がまるでない。
マンハッタンへの水の供給も、たった二つの古いトンネルに頼ってるらしい。そのうちまたひどいことにならなきゃいいけど。

●地球規模の異常気象
今年の夏は変な天候だった。日本が雨ばかりの冷夏かと思うと、逆に九月に入ったら三〇度を超える日々。ヨーロッパでは記録的な猛暑でしょ。
フランスなんか、熱波で一万人以上死んだっていうから。
病院に収容しても、あの国にはあまりクーラーがないんだよね。
だから、霧吹きで水をかけたりしてる。原発も温度が上がったからって水をかけてるんだよ(笑)。
フランスは原発天国だからね。暑さで爆発しなきゃいいけど。
この異常気象を見ると、温暖化ってのはスムーズに少しずつ進むんじゃなく、乱高下しながら上がっていくってことみたいだね。
それもあって"The Skeptical Environmentalist"(邦訳『環境危機をあおってはいけない』ビヨルン・ロンボルグ著、文藝春秋)のような、地球温暖化はウソだ、環境保護主義者たちは過度に悲観的である、と主張する本が出てくるのかな。たしかに今までの環境派にはそういう部分があるけどさ。でもこの本の著者もそういうネガティヴな部分だけ取り出してるとも言えるわけでね。
もちろん、異常気象が人間の活動によって引き起こされたという確証はないよ。だけど、自制して損したという後悔より、もう少し自制しときゃこんなことにならなかったのにという後悔のほうがきつい。だから、やっぱり良識として自制しとくべきなんだ。その本の訳者である山形浩生なんかは、インテリやくざを気取って、「俺は良識派の大学人なんかとは違うぜ」っていうポーズをとりたがるんだけど、ああいう幼稚な自意識って十代で卒業しといてほしいよね(笑)。

環境がらみでいえば、このあいだ沖縄に行ったの。戦後の沖縄では、焦土と化した那覇で家屋を建てるために、ヤンバルクイナも住んでる北部の照葉樹林の木を切り出した。で、その後に松を植えたんだけど、森の保水力が落ちたんだって。さらにそれらの松が今マツクイムシにやられてる。これはある意味、照葉樹林のところに松や杉みたいな針葉樹を植えてはいかんという自然の警告だよ。ところが、またぞろ照葉樹林帯で水が一番豊富なところを潰してダムを造ろうとしてる。国土交通省ではなく小泉チェンチェイ直轄の内閣府の沖縄総合調整局が主導する事業としてね。
僕も夏に南紀に行ったんだけど、那智の滝の上流の森も、やっぱり杉の植えすぎで保水力がなくなってきてるらしい。那智の滝って一応三筋落ちてなきゃいけないわけ。ところが往々にして二筋ぐらいになっちゃう。で、仕方ないから上のほうでホースで一筋足してるんだって(笑)。
だから、照葉樹林の落葉のほうが実はダムより保水力もあるんだ。まさに自然のダム。それと牡蠣なんかでも広葉樹が植わっているところから流れ込んだ水のある海じゃなきゃ美味しくない。つまり針葉樹からの水ではいいプランクトンも生まれないわけ。
何でもかんでも松や杉を植林しちゃったツケだよね。
●「美女軍団」の謎
韓国の大邱で開催されたユニバーシアードだけど、大会直前に韓国保守派が北朝鮮の国旗を焼いたりして一悶着あった。そのときは、盧武鉉大統領が遺憾の意を表明して収まったわけだけど……。
大会中も北朝鮮の記者と韓国の保守系市民団体のあいだでもみ合いがあったね。しかし、それよりも僕が気になったのは北の応援団だよ。
いわゆる美女軍団ね(笑)。
あれ最高だよね。なんで「軍団」なのか(笑)。
「敬愛なる将軍様が口紅の色まで配慮してくださっています」とかインタヴューで言ってたよ(笑)。
どういう化粧品使ってるんだろう。アメリカ製だったら最高だよね。エリザベス・アーデンとかジューイッシュ系だったらさ(笑)。
しかし、みんな同じ顔してて化粧も同じ。区別がつかない(笑)。
なんとなく藤原紀香とか松坂慶子みたいな系統の顔だよね。韓国や朝鮮はああいうのが好きなのかな。
秋田美人みたいなもので、朝鮮半島でも北は美人が多いっていうイメージがあるみたいだよ。ただ、今回はユニバーシアードだけあって、応援団も昨年の釜山アジア大会のときの精鋭部隊より若手を揃えたらしい。
女子大生を派遣したっていうんでしょ。でも、そんなにいっぱい大学があるのかね? 進学率がそんなに高いとも思えないし(笑)。
韓国の男たちは競技よりも彼女たちに注目してた。
テレビもニュース枠で、このネタをがんがん流してたしね。結局、おまえらも視聴率ねらいじゃないかって話でさ。ワイドショーと同じなんだよ。
しかし、地元の人がよかれと思って金大中と金正日の握手してる写真をプリントした横断幕を道端に飾ったら、「将軍様の写真をこんな道端に飾るなんてとんでもない」とか集団ヒステリーを起こして、自分たちでひきおろした横断幕をもって行進したのには参ったね。色仕掛けで韓国の世論を和らげようとしてたとすれば、あれは逆効果だった。まあ、日本だって、戦前・戦中は天皇を神と崇め、「御真影」には背中を向けちゃいけないなんて言ってたんだから、あれよりひどかったかもしれないんだけどさ。
だから、以前から述べてるように、お握りと携帯ラジオとヌード満載の『PLAYBOY』を空から配るべきなの。食足りて、情報を得て、豊かさを知れば、その昔にチョコレートを貰った途端に親米・従米・屈米になった日本と同じ軌跡を歩むって。

しかし、九月九日の建国記念行事なんか見ても、「一億火の玉となって鬼畜米英との本土決戦に臨む」とか言って竹槍を振り回してた敗戦直前の日本に似てるね。「肉弾!」なんていうスローガンが出たり(笑)。逆に言うと、燃料がなかった――っていうよりアメリカを刺激したくなかったんだろうけど、人海戦術一点ばりで、ミサイルも何も出てこない。「アメリカが敵対政策を放棄しなければ核抑止力で対抗せざるをえない」と繰り返すだけで、核配備宣言もない。なんとか交渉でやりたいってのが見え見えじゃない?
その意味では、イラクでの失敗に学ぶべきだよ、アメリカは。まあ、沿岸に埋蔵しているとも言われる石油利権の関係で、結果としてブッシュも慎重な対応なのが救いだけど。
とにかく、硬軟おりまぜてうまく対応すれば、北朝鮮が折れてくる可能性はある。むろん、長期的にはあんな独裁体制は倒れるべきだよ。だけど、短期的にはとにかく暴発を防ぐのが大事で、拉致被害者やその子どもが帰ってくるなら多少の裏取引だってやればいいじゃない? 実際、外務省の田中均がそうやって裏取引したから、少なくとも五人の拉致被害者が帰ってきたわけだ。ところが、北朝鮮と取引なんかするやつは「国賊」だと言われ、自宅に爆弾までしかけられる。野中広務の事務所にも銃弾入りの封筒が送りつけられる。ところが、石原慎太郎ときたら、「田中均というやつ、今度爆弾しかけられて、あったりまえの話だ」とまで言ってのけた。仮にも公職にある者が公の場でテロを煽るような発言をするとは! だいたい、お前は、アメリカが「テロとの戦争」と言い出したのに乗じて、北朝鮮攻撃や治安強化に血道をあげてるんじゃなかったのか、と。そもそも「国益」のために汚い裏取引でもやるのが外交官なんで、われわれはむしろそれを批判する立場なんだけど、それよりもっと単細胞的・暴力的な右翼が前面に出てきたんで、われわれが田中均ごときを擁護しなきゃいけないとはねえ。
テロリズムを肯定しちゃうんだから凄い話だ。9・11は怪しからん、と言ってたんじゃなかったっけ、石原は。チベット弾圧だって、中国は人権無視をしている、と石原は息巻いてるけど、考えてみると、極めて彼は御都合主義。仮に中国が共産主義でなかったとすれば、問題はチベットの側にあると叫んでたね。単純極まりない人物だ。まあ、オーストリアの極右指導者イェルク・ハイダーと似てるね。その石原が連載原稿も寄稿している「産経」でさえ、社説に当たる九月一二日付「主張」で石原に諫言しているのに、ナベツネ改めワタツネが牛耳る「讀賣新聞」は社説で一言も触れない。これも凄い。まあ、何れにせよ、今回の発言で「石原新党」も結成しにくくなったのは確か。
●小泉首相のクラシック名所巡り
八月に小泉首相が訪欧してたけど、ホントに外“遊”って感じでふざけてるよね。ドイツではバイロイト音楽祭に行ってオペラ鑑賞、チェコではドヴォルザークの墓参り。そしてポーランドでも……。
ショパンの心臓が納められたワルシャワの教会に行ってたね。
そうそう。まるでクラシックの名所巡り。ふざけたやつだよ。おまえの趣味のために税金を使っていいのかって話でさ。その昔、未だ高支持率だった時分のトニー・ブレアが、家族と一緒に夏休みでイタリアだかに出掛ける時、自費でエコノミークラスに搭乗していたのとは大違い。
自民党の江藤隆美チェンチェイが怒ってたよ、「五時間もオペラなんぞを聴きよって!」とかなんとか(笑)。もちろんプライヴェートで行くんだったら全然OK。だけど、今回のは公式の外遊だからねぇ。
そうだよ。政府の専用機で行っときながら公私混同の極致だろうって。あれでエコノミーのチケットを買ってプライヴェートとして行きゃ、オバさんには受けるだろうけどさ。で、エコノミー症候群になって、一日ぐらい向こうで倒れてたりしたら人気出るよ(笑)。

そもそも、ドイツは別として、ポーランドもチェコもラムズフェルドが言う「新しいヨーロッパ」──つまりイラク戦争に協力的な国なんだよね。そのあたりは明らかに意識してるんじゃないかな。もちろん六カ国協議を前にして北朝鮮と国交がある国に行ったって面もあるんだろうけど。
まぁポーランドなんて、イラク戦争に関してはアメリカにとって一番ありがたい国だよね。流石は、今は昔のレフ・ワレサが日本の資本主義に学ぼう、何故なら日本は社会主義的計画経済だから、と述べた国柄だ(笑)。今は日本もポーランドもアメリカの忠実なワンワンだし。
でも、北朝鮮に関して言うと、基本的に中国とロシアに圧力をかけさせるしかないんだから。他方、アメリカも、イラクの惨状でタカ派が後退した分、穏健派が力を増して、交渉を通じた段階的な解決を目指すって方向になってきた。まあ、六カ国協議が開かれて、今後も継続されそうだっていうだけで、一応の前進には違いないんじゃない?
●シュワちゃん出馬!
カリフォルニア州のグレイ・デイヴィス知事に対するリコール請求が成立した。一〇月にはリコール投票があるわけだけど、成立した場合に備えて州知事選挙が同時に行なわれる。噂どおりアーノルド・シュワルツェネッガーも共和党からの出馬を正式に表明したね。これがホントの「トータル・リコール」(笑)。
一三五人も立候補するんだって。シュワちゃん以外にポルノ女優や『Hustler』誌の発行人まで出てくるし、なんだかすごいことになってきた。ただ、リコールが成立しないと意味のない選挙になっちゃうんだよね。
現職の知事はちょっと可哀相な感じもする。三八二億ドルもの赤字を抱えたことで行政手腕を疑問視されたんだけど、前職のときに行き過ぎた電力自由化で停電が起きたり、IT先進地域のカリフォルニアがIT不況の直撃を受けたりで、必ずしも彼のせいで現状が悪いわけじゃないのに。
そういやシュワちゃんの親父がナチスの突撃隊員だったっていう記事が韓国の中央日報の日本語版サイトに載ってた。これはけっこう興味深いね。何故か日本では報じられてないけど。
ナチの息子がボディ・ビルにのめり込んでチャンピオンになり、アメリカに行って映画スターになったってことでしょ。故国のオーストリアにいれば、それこそハイダー・グループに入ってもおかしくないような人物だよ。マッチョらしく女性差別発言も多いし。
それでいて奥さんは故ケネディ大統領の姪だっていうからよくわからん。
ただ、前回の対談で「彼が大統領を目指すことがないとは言えない」って言ったけど、あれは法的には無理みたい。出生時から合衆国市民でなきゃ大統領にはなれないって憲法に書いてある。国務長官とかそういうのはいいんだけど。
へーっ、そりゃまたアメリカらしくない。
でもまあ、さすがにシュワルツェネッガーが勝つことはないでしょ。そもそも、さっき言ったようにマッチョであるにもかかわらず、妊娠中絶を認めるとか、ゲイの権利を認めるとか、共和党保守派からみるとレーガンに比べてあれでも「リベラル」過ぎるみたい(笑)。それに、カリフォルニアはなんてったって民主党の地盤だからね。現職のリコールが成立したとしても、同じ民主党の副知事が勝つんじゃないかな。
と、思ってたら、そもそもリコール投票自体が無効であると、連邦裁判所が言い出して、リコール推進派が憤っているんだって。どうなることやら。
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