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●アメリカの謀略!?
10月にモスクワで起きたチェチェン武装勢力による劇場占拠事件は、ある種の衝撃だったね。ロシアからの独立をめざして戦ってきたチェチェン共和国は、100万人ぐらいの人口のところで十数万人も殺されちゃってるんだよ。
油田のあるカスピ海と関係のないところだったらよかったのに、あまりにも地政学的に重要な場所だからロシアが独立を許さない。しかも、これまでは欧米がロシアのチェチェン弾圧に批判的だったのが、今では「テロとの戦い」の一環として黙認するようになっちゃったから、いよいよ追い詰められたチェチェン人が暴発したわけだ。
イスラム教のジハード(聖戦)だと思って全イスラム圏から若者が義勇兵として志願して来るのでしょ。
モスクワの劇場占拠の犯人もアル・カイダとつながってる可能性があるとロシア政府は言ってるけど、そうなったのは自分たちがチェチェンを無茶苦茶に弾圧してきたからだっての。しかし、真相はまだわからないけど、ロシアはソ連時代と変わってないね。約700人の人質のうち120人くらいが死んだ、それが特殊部隊の投入したガスのせいだってんだから。約40人のテロリストも全員殺されたみたいだし。
なんだかバリ島のテロも、実は密かにCIAが関与している可能性を考えちゃう。亡くなったのはアメリカ人でなく、オーストラリア人が大半。実行犯はイスラム系にしても、そこに金を渡して吹き込んだスパイがいないとも限らない、と。「イデオロギー」が溶解して、冷戦がなくなった今、CIAも自分の組織を維持しなきゃいけない。日本の大学じゃないけど、独立行政法人として(笑)。すると、手っ取り早いのは、ゲリラがテロをしてほら大変だ、我々の存在意義は益々高まっていると印象づけること。ダムを造ってはみたものの、堆砂が激しくて機能不全に陥って、豪雨の際に下流の堤防が一部決壊すると、責任は棚上げで、ワーッ、大変だぁと騒ぎ立てる役人の発想と同じかな(笑)。

僕は謀略説を信じないけど、この種のことってちゃんと裏が取れないからね。もしアル・カイダから命令が出てたとしたって、入り組んだ伝言ゲームだから、本当にビン・ラディンがそう言ったのかなんて誰にもチェックできない。となれば、逆に謀略を仕掛けやすいとも言えるよね。
そうなんだよ。別に僕は謀略史観の持ち主ではないけど、アメリカ謀略説をどうしても捨てきれないね。だって、色んなことが世界各地で起こり過ぎてるじゃない。
ほんと、そういう謀略説を信じたくなるくらいひどい状況だってことだね。また、本当にこれがすべてアル・カイダの組織的犯行だとしたら、恐るべき実力だと思うけど(笑)。
●訴えてくれ!
先週の「週刊ダイヤモンド」の特集でも触れられていたけど、長野県では今、組織改編の準備の真っ最中なの。余談だけど、最近の「ダイヤ」での長野県政特集は、僕のインタヴューも取らず(笑)、当の本人も雑誌が発売になって初めて、ヘーッ、また特集組んでいるんだ、と知るような状態。水くさいよなぁ(笑)、特集担当の相川俊英も。話を戻すと、行革というと、組織をどうするかの話だけになっちゃう。今ある部署をどう順列・組み合わせするかになりがち。行革って、意識改革なんだよ。その意味でも、過激な部署を新たに政策秘書室の中につくろうかと思ってね。名付けて「突破室」(笑)。宮崎学じゃないんだけどね。たとえば国や業界から訴えられかねない施策を始めるとか。それが良い意味でのメディアポリティークなんだ。県の新しい施策や条例に対して、国や業界が訴えたとする。「『脱・記者クラブ』宣言」でお怒りな誇り高きマスメディアの皆様は、ここぞとばかりに僕や長野県を叩く(笑)。でもね、そこで市民は、ありゃ、どっちが正しいんだ、どっちが望ましい社会の実現を訴えているんだ、と考える機会を与えられる。
実はEUすら日本の記者クラブ制度の撤廃を要求してるんだけどね。

本誌で語った不良債権処理問題だって、市民たちは銀行の肩を持つ大新聞を、なんか変だなぁ、と考えてると思うんだよ。
銀行の頭取連中が竹中を訴えるなんて話もあるけど。
だからやればいいんだよ、どんどん。それは不信任を出した県議みたいなものであってさ。最後は市民が判断するんだよ。前例踏襲の職員の意識を変えるには、僕は訴えられることを恐れずに、ガンガンやっていかなきゃいかんと思ってるんだ。何かないかな(笑)。
いやぁ過激だねぇ(笑)。とにかく、不良債権処理の件に関しては、とりあえず竹中を擁護するしかない。
そういうこと。ところが民主党は竹中を批判してるんだよ。「こんな銀行改革は過激すぎて可哀想だ」と言ってんだから、もう何をかいわんやだよね。
だって竹中プランは昔の金融国会のときの民主党案とあんまり変らないよ。
でしょ。だから民主党があまりにアホ過ぎるんだよ。竹中への問責決議案を出そうとしたんでしょ? 何を考えているのかね。
自民党が竹中の問責決議案を出して、民主党がそれに反対すべきなのに(笑)。
どうしようもないね、民主党も末期症状で。だけどまあ、そういう意味では「竹中君、少し頑張ってちょ」って感じだね。似た顔の泉麻人も慶應出身ってことで(笑)。
● 三重県知事の去就やいかに?
三重県知事の北川正恭が3選出馬を断念したニュースがあったね。ウェッブ版の読者への特別サービスとして、この最新ニュースを取り上げとこう。
いやぁ、僕の対談原稿の直しが遅くて、ウェッブ版を楽しみにしている読者にはいつも肩すかしのご迷惑をお掛けしているからね(笑)。
で、北川の件だけど、どうも、僕の直感では、中央政界に戻るという話ではない気がするんだ。実は複数社からコメントを求められて、余人には計り知れない深い思いが有るのでは、と話したの。震災後に巨額の公共事業を行うこととなった兵庫県の貝原俊民が突如、妻の介護を理由に辞任した時と同じ印象を抱いたものだから。ちなみに今朝の「朝日」(11月26日付)は、「中央政界には、鹿野道彦代議士の元秘書が公共事業の口利きで逮捕された業際都市開発研究所事件と何らかの関連があるのではないか、という指摘も出ている」と2面で記していたね。或いは満を持して表明したのかも知れないけど、昨日のテレビニュースでの扱いも、フラッシュニュース的ではあった。やしきたかじんに似てるでしょ、彼の相貌は(笑)。玄人受けする毒舌家。永田町や番記者の間では知名度も高いけど、細川護煕に一般市民が期待したような風を起こせるかどうかは未知数。北川が北野武レベルのポピュラリティになれるかどうかは、今後の精進次第。

なるほどね。まあ詳しい事情は追い追い分かってくるだろうけど。
●吉本興業のどケチぶり
話は全然変わるけど、吉本興業の木村政雄常務が辞めたじゃない。講演をやり過ぎだ、と社長の林裕章から批判されて。でもね、あの会社で成功している事業は殆ど木村がやったものでしょ。林ジュニアというのはホントになぁ__。MBAをとったような2人の若者を外資系から入れて、情報産業の雄になろうとしてるらしいよ。遅れたバブル。人間でも組織でも、本業を忘れちゃいけない。創業者の吉本セイがウラ社会の各方面に頭を下げて、神社の境内で漫才をさせてた頃の本分を、良い意味で忘れちゃいけない。著作権ビジネスが本業になっちゃ、吉本はもうダメだと思うよ。ところが、西の電通を目指してるからなぁ。しかも、色々なところに「木村に講演を頼むな、書かせるな、出させるな」って回状を回してるんだよ。信じられないよ。
漫才ブームにしたって、ほとんど木村の功績じゃない?
そうなんだ。僕個人で言えば、木村とは思想的にも相性的にも違うけど、吉本のやり方はおかしいよ。横沢彪だけ専務にして、木村は常務のままにしておいたのも納得いかない。
横山やすし・西川きよしのマネージャーから出発した木村は、「泣いて馬謖を斬る」って感じで横山やすしを切った後も、自分のオフィスに等身大のやすし人形を置いてたらしいからね。タレントと人間として付き合ってる。そういうお笑いの現場感覚なしに、下手な情報産業化を図ろうなんて、自殺行為だよ。
でも、吉本ってすごいらしいね。学園祭に出た吉本の若手タレントが自分のギャラが100万だと聞いちゃって、後で銀行口座を見たら1万円振り込まれてたとか(笑)。

いや、ホントそうだって。まあ、言っても大丈夫だろうけど、とある有名な所属タレントが昔、和歌山のほうでイベントやれと言われて行ったんだけど、大渋滞で20分ぐらい遅れたんだって。そうしたら「ワンステージ30分の為に700万も出したのに、困ります」と言われてびっくり。「おかしいな、おいら70万のギャラと聞いてたはずなのに」だって(笑)。すっごい話だよ。
まあ、売れなくなっても面倒を見てもらえるって意味で、一種の保険も兼ねてるんだろうけど、それにしてもすごい話。
●ノーベル賞の皮肉
今年は、小柴昌俊の物理学賞、田中耕一の化学賞と、日本人がノーベル賞を二つも取った。田中耕一があまりにナイーヴなんで国民的人気があるってのも妙な話だけど、まあ島津製作所の地道な研究員に光が当たったのはよかったよ。文部科学省がCOE(センター・オブ・エクセレンス)予算とやらをバラまいてて、国立大学の研究者がその申請書づくりに忙殺されるなんていう滑稽な状況になってるんだけど、そもそも国策でノーベル賞を取ろうなんていうのがおかしいし__。
それじゃダメなんだよ。
そう、民間の会社員でもオリジナルな仕事をすれば取れるんだよ。
うん。だから田中耕一の受賞は一種の皮肉だよ。
まさにその通り。とにかく、DNAの解析に目処がついた後、これからはタンパク質の解析が重要になるわけで、そこで田中耕一の開発した技術が活用されるわけだから、それ自体にどのくらい知的な意味があるかはともかく、重要な仕事には違いない。
でもさ、同じ田中でも、余りに社会性が欠如した編集長が更迭された『週刊朝日』でも、「やっぱり変人が素晴らしい」と彼は書いてもらえるけど、相変わらず田中康夫は知的なマスメディアの皆様からは評価されない変人扱い。いやぁ、人徳がないオイラはつらいぜ、ほんとに(笑)。でも、変人でなきゃ物事は変えられないんだよー。

田中耕一は、あの木訥さが大衆を安心させるんだよ。「東京へ行くのに初めて500系のぞみに乗れてよかった」とかさ(笑)。その点、小柴昌俊は偉そうな感じに見えるから損してるね。ただ、あの人でさえ、予算をぶんどってスーパーカミオカンデのような巨大な研究施設をつくったってのが実績だから、そういうボスがいないとビッグ・サイエンス時代の科学は進まないとはいえ、やっぱり昔の湯川秀樹や朝永振一郎なんかとは格が違うんだな。
うんうん、違うよねえ。どんどん小粒化してるよね。
スーパーカミオカンデだって、浜松ホトニクスっていう会社の職人がバカでかい光電子増倍管をつくったからできたわけでね。そんなでかいのは無理だっていうのを無理やりつくらせた交渉力が小柴の強みなんだろうけどさ。とにかく、浜松ホトニクスにせよ島津製作所にせよ、日本の強さはそういうモノづくりにあるってことを再確認するきっかけにはなったと思うよ。
●ベストセラーの怪
『ハリー・ポッター』って何が面白いの? 最新刊は初版部数が230万部だよ。異常でしょう?
何なのかね? 前作の映画は機内で観たけど、興味はそそられなかった。
このあいだの発売日には、魔法使いの格好をしたおばさんと本を買った読者が握手してるの。単なる売り子かと思ったら、あれが出版社の社長で翻訳者なんだって。
そうそう、松岡っておばさまね。僅か社員が2、3人の会社で、翻訳も彼女だから印税も全部入るわけでしょう。しかも今度の作品は、昔の岩波と同じで、初版は書店の買い取り。最高だよね。
しかも、あれ、上下巻で分売不可なんだって。
うそー。
ビニールで覆ってあってさ。
いやぁビニ本かあ。やられたなあ、芳賀書店(笑)。
村上春樹も上下二冊路線で、今度の『海辺のカフカ』もそれで当たったみたいだけど、次からはビニ本にしなきゃ。ともかく、イギリスでもどこでも、ああいう定型的なファンタジーって昔からいっぱいあって、それぞれの時代でそれなりに売れてたけど、世界で1億部を超えるベストセラーになったなんて初めてだよ。
やっぱり世界的にチャイルディッシュになってるんだろうね。
映画ともうまくタイアップしてるし。そういえば、それに出演してたリチャード・ハリスが死んじゃったな。

そうだよね、いい役者だったけど死んじゃったんだよね。
あと、最近一番嫌なのは『声に出して読みたい日本語』のシリーズ。
ああ、齋藤孝ね。
ああいう体育会系の身体論バカって最悪だよ。腹から大きな声を出して読もう、相手の目を見てしゃべろう、とかさ。金八先生みたいな熱血教師が言いそうなこと。もうサイテー(笑)。
あはは。
たとえば、川端康成の『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」を引用してるんだけど、「こっきょう」ってルビを振ってあるわけ。日本国内なんだから「くにざかい」だろうって(笑)。週刊誌とかで批判されたから、最近の版では直してるみたいだけどね。基本的に文学なんて何もわかってない。とにかく元気よく朗々とっていうだけの売りであそこまで行ったんだよね。
それで100万部突破だからね。脅威だよ。
『日本語練習帳』なんかで日本語論ブームの先駆けになった大野晋は国語学の権威でしょ。日本語が古代タミール語と似てるとかいう説はにわかには信じがたいけど、大学者には違いない。だけど、齋藤孝は怪しいよ。頭だけじゃダメで、体で覚えようってのはいいけど、それだけじゃねえ(笑)。
だいたい、文字がダメで音声がいいっていう考え方こそが反動的なイデオロギーの核心にあるってのはジャック・デリダや柄谷行人の言う通りで、とくに日本の場合は、漢字は外国から輸入された理論(漢意[からごころ])を表記するものにすぎず、かなで表記される音声こそが日本人の身体に根ざした感情(やまとごころ)を表現しうる(かなは漢字から派生したものであるにもかかわらず)っていうような国学的イデオロギーが、つねにナショナリズムを支えてきたわけでしょ。齋藤孝も無自覚にそれを反復してると思う。
その点、田中康夫の文章は難しい漢字が多いし、そこに奇妙なルビが振ってあったりもするし、齋藤孝みたいな連中が気持ちよく読めない文章なんだよね。そこにすでにナショナリズムとのズレがあるんだと思う。だから、石原慎太郎が言ったのとは反対に、田中康夫こそが本当の「作家知事」なんだと思うよ。
いやぁ、久方振りに誉められると、こそばゆいなぁ(笑)。
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