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トップ ■ 連載 第一回「続・憂国呆談」番外編Webスペシャル
 2002年6月号

憂国放談    ............... ■ あの名物対談が帰ってきた!
「CREA」「NAVI」「GQ」と流浪を続け、ついに「週刊ダイヤモンド」誌上で月一回連載として復活した「憂国呆談」。長野県知事・田中康夫と、知の仕掛け人・浅田彰が、しなやかに軽やかに、そして鋭く世相を斬る!
Webスペシャル版では、誌面に載せきれなかった本音&過激トークを特別大公開!是非「週刊ダイヤモンド」本誌の連載と併せてお読み下さい!
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まだまだある有事法制の大問題!


浅田 彰 さて、誌上に収録し切れなかった有事法制を巡る話の続きだけど。

田中康夫  有事法制を制定したがるエセ保守陣営は、曲がりなりにも「保守」を自任するなら、なんで正々堂々と憲法改正の議論から始めないんだ、と。これは、自由党の東祥三と「朝まで生テレビ」で意見が一致したことだけどね。よしんば、なし崩しを考えてるんだとしても、もうちょっとは気概を感じさせるなし崩しを考えてみたらどうなんだ(笑)と。

 だって、市民も憲法も横に置いたまま、今すぐ簡単にできそうな、だけど、上陸武力攻撃型に備える、なあんて時代錯誤な法制化を、一艘の不審船が来ただけで慌ててやろうとしてる。黒船の時代じゃないんだからさ(笑)。そもそも、有事法制が必要だという意見は、9・11以降に沸き上がってきたんでしょ。なのに、サリンを始めとする様々な化学テロ、あるいは大地震といった有事の議論はされないまま。想像力の欠如だね。

 雅子妃のご学友だと勝手に自任している工藤雪枝なんて「だって、大変なことが起きるかもしれないんですよ」だって。ほとんど社民党支持者のおばさんと同じレベル(笑)。「子供に大変なことが起こるかもしれないから有害図書を規制しなきゃ」と言ってる矯風会思想と一緒。あれでも、東大、ロンドン大ってのが嗤える。菊川怜も卒業生の時代だから。早い話が宮崎緑のミニ版ね。

 実はアメリカにとって、軍事というのは最大の公共事業なわけ。とりわけ、共和党にとってはね。その公共事業で成り立ってる産業は、日本の土建業の比じゃない。日本から巨額の思いやり予算をもらって、アメリカに置いておいたら問題児化しかねない若者を日本に駐屯させてることも、アメリカにとっては極東における最大の公共事業なんだよ。そして、極東と言いながら、在日米軍は北からの攻撃に備えて配備されてるのではない。当初は中台勃発に備えて沖縄が存在したけど、その可能性も今や少ない。で、生き残りのために南西アジアどころか中近東まで職掌範囲になってしまってる。まさに拡大解釈。

 小泉には国家論とか外交論なんてものは何もないでしょ。すると「小泉というやつは何も考えてない真空状態かもしれない、であればそれをうまく利用してやろう」というのがアメリカの戦略なんだよ。

浅田 彰  もちろん、小泉の出身母体の森派は岸・福田以来の右翼の派閥だから、もともと右翼ではあるんだろうけどね。

田中康夫  イギリスを見てもブレアの支持率が落ちてるでしょ。多少ともロジカルな考え方をするヨーロッパの政治家や中近東の王族は最早、アメリカが攻撃されたからというだけでは追従しない。そうやって考えると、アメリカにとって一番利用しやすいのは日本なんだよ。

 我々のような意見を、国体を考えず国を危うくするものだと言うアホな連中も居そうだけど、一体、「国体」なんか考えてる気概の持ち主が、今の甘ちゃん保守の連中の、どこにいるのさ?みんな追米・従米・屈米じゃないか。

浅田 彰  そういう意味では、小沢一郎と田中康夫が逆説的に接近して見えちゃうわけだよね。

田中康夫  だって、日本には自由党しか、論理的に考えてる政党は存在しないんだから。

 それともう一つ言えば、首相官邸というヘッドクォーターに、現場の状況を想像して、的確な指示を出せるような、僕が言うところの「勘性」が存在するのかいな、ってこと。現場の人間にとっては、もしかしたら死体を処理することや、塹壕をつくることや、あるいは人心を落ちつけるために食糧や医薬品を調達することのほうが必要かもしれない。そういう想像力が働くんだろうか、疑問だね。

 あるいは、逆に官邸に最初にミサイルが落ちて首相が死んだら、誰が代わって司令を出すのかすら決まってない(笑)。司令機能をどう分散するのかすら考えられてない。これこそ有事でしょ。そういう問題は何も議論しないで、北からの脅威に備えてとか言ってる。もう、お笑いでしかないよ。

浅田 彰  アメリカなんかは、テロの時でも、とにかく大統領をすぐ専用機に乗せて戦闘機が護衛するとか、そういうことはやってるからね。

田中康夫  敵の上陸を想定するような時代錯誤な有事法制を、どうしても作りたいんなら、それこそ旧来的公共事業が今困ってるらしいから、日本海側にずっと万里の長城みたいな城壁でも造れ、と。国土交通省も、なまじ悔い改めないで、鳥取砂丘に高さ20メートルのコンクリの防壁を築け、と。それでこそ今回の法律と整合するよ(笑)。

浅田 彰  あるいはITを駆使して完全なバリアをつくって誰も拉致できないようにするとかね。

田中康夫  ホントだよ。

浅田 彰  我々も、北朝鮮の体制はどうしようもないと思うし、一刻も早くつぶれたほうがいいと思うよ。だけど、無闇に刺激して過剰反応されるとしたら、それ以上バカなことはない。それにしても、あの赤軍のバカどもが日本人の女性をさらって結婚するというのはどういう根性なの?もし彼らの関与が本当なら、それは北朝鮮の問題である以上に赤軍の問題だよ。

田中康夫  ところが都道府県知事を対象にしたアンケートによれば、今回の有事法制に反対なのは高知の橋本大二郎と僕だけ。三角をつけてる知事も十何人かいるらしいけど、おいおい、この段に至っても、ちゃあんと態度を旗幟鮮明にできなくてリーダーとして大丈夫かいという感じだね。

浅田 彰  そこでまた頭の硬い左翼は、そう言ってる田中さんが自衛隊駐屯地を訪問するのはおかしいとか言う。そんなことはない。視察した上で、反対すべきことには反対すればいいんだ。

田中康夫  だって、自衛隊が現実に我々の生命を守ってる部分があることは確かじゃない?その彼らを無視して排除したって何も進展しない。自衛隊員のなかには、こんな世の中になるとは思わずに、安定した公務員だと思ってなった人もいるはず。それを良い悪いと言うんじゃなくて、現実に彼らを市民の側に引き戻さなきゃいけないんだよ。

浅田 彰  実際、主に災害救助をやるんだと思って入った隊員は多い。いろんな資格もとれるしね。それが突然インド洋とかにやられてものすごく困ってる。ちゃんとした武器も持っていけないし、攻撃されてもすぐには応戦もできない。しかも、後方支援専門だから、アメリカその他の軍隊が作戦を展開してても、上空を飛行するコースとかに関して、自衛隊にはまったく事前連絡がない。危険なところで使い走りだけさせられてるわけ。今回の有事三法は、それを国内でやるようなものかもね。

田中康夫  そう。有事立法ができて一番喜ぶのは誰かといえば、まさに法令によって規定されないアメリカ軍だけ。自衛隊には数々の制約が課せられる中で、アメリカ軍のみが日本の領土内でオールマイティに動けるようになる。これはまさに属国化。「ハワイの次の州になります」ということだよ。

浅田 彰  アメリカは喜ぶだろうけど、いわゆるナショナリストが喜んでるのはまったく理解できないね。

田中康夫  だから、団塊世代に数多い彼らは、ナショナリストなんて存在じゃないんだよ。亡国の民で、我々が望んでいるのとは全然違う意味で、日本という社会の概念を壊そうとしている。嘆かわしいね。

浅田 彰  だから我々がむしろ憂国の民になってしまうわけだ(笑)。

(了)

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次回更新は7月初旬の予定です!