記事一覧:元特捜部主任検事のざわめき59件
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元特捜部主任検事のざわめき
開示証拠のネット投稿で有罪判決 法の初適用で問われる『証拠は誰のものか』
2014年3月24日3月12日、東京地裁は、検察から開示を受けた自らの刑事事件に関する証拠をインターネット上に投稿した不動産会社社長に対し、有罪判決(懲役6月・執行猶予2年)を言い渡した。2005年の刑事訴訟法改正で新たに導入されたものの、長らく使われていなかった開示証拠の目的外使用罪が初めて適用された事案だ。今回は、この事案の経過を振り返りつつ、この機会に証拠の目的外使用という問題について触れてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
PC遠隔操作事件で検察が失態 知られざる保釈制度の実態とは
2014年3月7日電撃逮捕から約1年となる今月5日、一貫して関与を否認しているPC遠隔操作事件の被告人がようやく保釈された。今回は、その経過を振り返るとともに、この機会にあまり知られていない保釈制度の実態などについて触れてみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
ディオバン問題でノバルティスに捜査のメス 想定される今後の展開と特捜部の関心事
2014年2月21日19日、東京地検特捜部は、京都府立医科大学や東京慈恵会医科大学など5大学で行われた高血圧治療薬ディオバンの臨床研究に販売元である製薬会社ノバルティスファーマの男性社員(発覚後の昨年5月に退職)が関与し、研究データの改ざんなどが疑われている問題で、同社や京都府立医大など関係先の捜索に着手した。厚生労働省などがノバ社を刑事告発したことがきっかけだ。今回は、臨床研究の信頼性を根底から揺るがしたディオバン問題を振り返り、想定される今後の展開や特捜部の関心事を示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
クレディ・スイス証券元部長に再び無罪判決 当局が告発や起訴に至った背景とその問題点
2014年2月7日先月31日、2006~07年の2年間にストックオプションの行使などで得た所得約3億4900万円を申告せず、所得税約1億3200万円を免れたとの事実で在宅起訴されたクレディ・スイス証券外国債券部の元部長に対し、東京高裁が検察側の控訴を棄却する判決を下した。 脱税の故意が認められないとして元部長に無罪を言い渡した一審東京地裁の判断を支持し、懲役2年・罰金4千万円を求める検察の有罪主張を切り捨てたものだ。東京国税局査察部(マルサ)が告発して東京地検特捜部が起訴した事件で全面無罪判決が出た例はなく、一審・控訴審とも文字通り当局の完敗といえる。特に今回の事案は給与所得者に対する源泉徴収制度に関連するものだけに税務全般に与える影響も大きく、当局が受けた衝撃は計り知れない。そこで今回は、国税局や検察が無理な告発や起訴に至った背景を分析し、その問題点などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
深刻な医師不足で崩壊と存亡の危機 『塀の中』の知られざる医療の実態
2014年1月24日1月21日、医師や元厚生官僚、刑事法学者、弁護士らをメンバーとする法務省の有識者検討会が、刑務所や拘置所といった矯正施設における医療の在り方に関して報告書を公表した。深刻な医師不足で矯正施設の医療は崩壊と存亡の危機にあり、人材確保のためには給与水準や定年の引き上げといった待遇改善を要するとしている。そこで今回は、この機会にあまり知られていない『塀の中』における医療の実態を取り上げ、その問題点などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
激震走る捜査当局の大失態 被疑者の逃走を許した油断と隙
2014年1月10日正月気分も冷めやらぬ7日午後、強盗などの容疑で逮捕・送検されていた20歳の男性被疑者が横浜地検川崎支部から逃走し、全国に激震が走った。もちろん、逃走した被疑者が一番悪いのは当然だが、つい油断し、被疑者にその隙を与えてしまった警備態勢の甘さも見過ごせない。被疑者は9日午後に身柄を確保されたが、今回は、本来取るべきだった方策を踏まえ、油断や隙が生じた状況や今後の改善策などについて言及したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
捜査当局の視点から見る 特定秘密保護法の使い勝手
2013年12月20日12月6日、特定秘密保護法が国会で成立し、13日には公布された。1年以内の施行に向け、既に様々な準備活動が急ピッチで進められているが、最大の関心事は、今後この法律がどのように運用されるのかという点ではないか。そこで今回は、捜査当局が自ら捜査情報を漏えいする立場と、他官庁の漏えい事案を捜査起訴する立場とに分け、それぞれの視点から特定秘密保護法の使い勝手について見てみたい。
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元特捜部主任検事のざわめき
右側路側帯通行に罰則を創設 自転車の基本ルールと留意点とは
2013年12月6日12月1日、自転車による右側路側帯の通行を禁止した改正道路交通法が施行された。しかし、自転車の利用者は交通規則を体系的に学ぶ機会が乏しい上、警察の周知不足もあり、今回の改正法はもちろん、改正とは無関係の基本ルールすら守らず、平然と無謀運転を行う自転車が後を絶たない。交通事故全体の件数は減少傾向にあるが、自転車絡みの事故は全体の2割に上るばかりか、この10数年で自転車対歩行者の事故は約4倍、自転車同士の事故は約6倍にまで増加している。そこで今回は、改めて法令が定める自転車の基本ルールを振り返り、その留意点などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
NHKの受信契約拒否に画期的判決 今後の受信料徴収に与える影響とは
2013年11月22日テレビを購入したものの、NHKを見ず、NHKと受信契約を締結する気が全くない場合でも、なお契約を締結し、受信料を支払う必要があるのか。こうした問題に対し、先月30日、東京高裁がNHKの主張を全面的に認めた注目すべき判決を下していたが、期限までに上告の申立てがなく、そのまま確定するに至った。今回は、受信契約の根拠となっている放送法の規定や今回の判決を振り返り、この判決が今後の受信料徴収に与える影響などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
各地で発覚が相次ぐ食材偽装問題 刑事事件となるか否かのポイントとは
2013年11月8日阪急阪神ホテルズによる食材偽装問題は、発覚後の対応のまずさも重なり、経営トップの引責辞任にまで発展した。しかし、その後も各地のホテルや旅館、百貨店などで次々と同様の食材偽装が発覚している。
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元特捜部主任検事のざわめき
混迷の一途をたどる暴力団融資問題 みずほ銀行の甘さと捜査当局の関心事
2013年10月25日みずほ銀行の暴力団融資問題は、金融庁による業務改善命令後、警視庁が詐欺罪の立件を視野に入れた捜査に着手したほか、持ち株会社みずほフィナンシャルグループの個人株主が株主代表訴訟の動きを見せるなど、混迷の一途をたどっている。しかし、いまだにみずほ銀行に対する同情的な声も一部で耳にする。そこで今回は、改めて暴力団融資問題の本質を振り返り、捜査当局の関心事などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
みずほ銀行の暴力団融資問題から再び学ぶ 企業における危機管理上の留意点
2013年10月11日9月27日、金融庁は、みずほ銀行に対する検査で法令遵守上の重大な問題が判明したなどとして、同行に対し、銀行法に基づく業務改善命令を下した。同時期に高視聴率を得ていたドラマ『半沢直樹』がメガバンクに対する金融庁検査をテーマにしていたこともあって、経済ニュースに縁遠い層にも関心を呼び、「リアル半沢直樹」などとネット上で話題となった。
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元特捜部主任検事のざわめき
元大阪地検特捜部長らに再び有罪判決 当事者が語る検察改革の方向性
2013年9月27日9月25日、大阪高裁は、大阪地検特捜部の犯人隠避事件につき、元特捜部長と元副部長の控訴を棄却し、一審有罪判決を支持した。この事件で元特捜部長らが庇った「犯人」というのが、この私にほかならない。事件発覚から3年が経過し、様々な議論がなされてきたが、真の検察改革は一向に進んでいない。
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元特捜部主任検事のざわめき
福島第一原発事故で全員不起訴 検察の限界と今後の展開
2013年9月13日検察は、東京電力福島第一原発事故に関し、業務上過失致死傷罪などの容疑で告発・告発されていた当時の東電幹部や政府関係者ら42人全員を不起訴とした。予想されていた結果ではあるが、改めて検察の限界を示した形だ。今回は、検察が不起訴とせざるを得なかった事情や、想定される今後の展開などを示したい。
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元特捜部主任検事のざわめき
秋田書店の不正懸賞問題から学ぶ 企業における危機管理上の留意点
2013年8月30日8月20日、消費者庁は、老舗出版社の秋田書店による読者向け懸賞に不正があったとして、同社に対し、景品表示法に基づく措置命令を下した。これだけだと、問題もすぐに沈静化しただろう。しかし、度重なる秋田書店の対応のまずさもあって、ネット上で炎上を繰り返し、信頼回復への道が遠のく結果となってしまった。
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元特捜部主任検事のざわめき
ドラマ『半沢直樹』から読み解く 国税当局の今後の狙い
2013年8月16日型破りのバンカーを主人公とする連続ドラマ『半沢直樹』が高視聴率を上げている。原作は直木賞作家・池井戸潤氏の小説であり、週刊ダイヤモンドで連載中のシリーズ第4作『銀翼のイカロス』も好評だ。ドラマでは、スチール会社社長が粉飾決算の末に計画倒産し、脱税で不正蓄財した上、ハワイに5000万円の別荘を所有しているといった設定であり、これを半沢(銀行)と国税局のどちらが先に差し押さえるかが見ものだった。
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元特捜部主任検事のざわめき
あなたの子どもは大丈夫? 児童ポルノ単純所持罪創設の影響と懸念
2013年8月2日1991年に発売された女優・宮沢りえのヘアヌード写真集「Santa Fe(サンタフェ)」。人気絶頂期に写真家・篠山紀信によって撮影されて話題を呼び、150万部超のミリオンセラーとなった。しかし、撮影時の宮沢りえは18歳未満だったともいわれている。誰にも渡すつもりがなく、密かに持っているだけの行為。それが児童ポルノであっても、現在は法律による罰則規定がない。奈良や京都、栃木のように条例で規制しようという自治体もあるが、全国的に見ると稀だ。
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元特捜部主任検事のざわめき
絶対的エースの特捜部長就任で 特捜検察が変わること、変わらないこと
2013年7月26日特捜検察に対する批判の嵐が吹き荒れ、完全に牙を抜かれたとも言われる昨今。それでも、権限の強大さや取り扱う事件の中身、社会やマスコミの関心度の高さ、情報網の大きさや情報量の豊富さ、メンバーの顔ぶれなどを見る限り、なお東京地検特捜部が日本最強の捜査機関であるとの事実は動かない。
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元特捜部主任検事のざわめき
「ほけんの窓口」事案は税率引き上げの地ならし 消費税不正還付に厳罰姿勢で臨む当局の思惑
2013年7月12日約15年間の現職中、特捜部に所属すること約9年。著名事件の捜査に数多く関わり、社会の「裏の裏」を見てきた。証拠物の改ざんにまで手を染めた主任検事。それが私だ。 602日間の獄中生活を経て、社会復帰から既に1年余り。厚生労働省の村木厚子事務次官やそのご家族の皆様をはじめ、すべての関係者の皆様に対し、改めてこの場をお借りし、衷心より深くお詫び申し上げます。私はこれまで、フェイスブックなどで刑事司法制度の現状や問題点を指摘してきた。反省を重ね、少しでも「罪滅ぼし」をするべく、無力な自分にできることは何かと思い悩んだ結果、インターネットという簡易迅速な媒体を使い、専門的な問題点をできるだけ分かりやすい言葉で多くの方々に示し、真の検察改革に向けた判断材料の一つにしてほしいと考えるに至ったからだ。組織を離れ、特異な経験をした人間だからこそ、見えてくるものや、語れることもあるはず。この連載では、日々のニュースなどを題材にしつつ、独自の切り口で、今の社会や経済、政治を見ていきたい。