記事一覧:Book Reviews 目利きのお気に入り419

  • 既存の仕組みを問い直す「新しい公共」への視点

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    既存の仕組みを問い直す 「新しい公共」への視点

    2013年7月20日号  

    東日本大震災以降、世の中の既存の仕組みを問い直し、「新たな公共」とも言うべき仕組みを模索する動きがあります。『「幸せ」の経済学』も、そうした問題意識の著作です。GDPの伸びを基にした経済成長観と所得の増加を前提とする幸福ではなく、ゼロ成長社会(定常型経済)での幸福とはどのようなものなのか。GDPは世界最低クラスなのに、国民の幸福度は世界一のブータンや諸外国の幸福論議を検証しながら、日本が米国型の低負担、低福祉国になるか、ヨーロッパ型の中・高負担、中・高福祉国になるかの選択のときが迫っているといいます。

  • 既存の価値感がひっくり返る未来の働き方を考える

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    既存の価値感がひっくり返る 未来の働き方を考える

    2013年7月13日号  

    働き方や、それに未来予想を掛け合わせた著作が増え、売れ行きも好調です。『やる気もある!能力もある!でもどうにもならない職場』は、やりがいや成長実感を妨げる職場の閉塞感が発生する構造や対応策を、コンサルタントが解説します。冒頭、スキルの限界で昇進ができなくなったり、子会社に封じ込められたりした四つのケースをストーリー仕立てで紹介。これが、ものすごくリアルで鳥肌が立つほど。その興奮が強いせいか、次章以降の解説もストーリー仕立てならばよかったのに、と思ったのですが、それはないものねだり。面白い。

  • 相手に伝わらないを解消する思いを他人に伝える力

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    相手に伝わらないを解消する 思いを他人に伝える力

    2013年7月6日号  

    思いを他人に伝える力についての著作が相次いでいます。論理の構成の仕方など、日常で使うにはちょっとトレーニングが必要な本が多いのですが、『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』は違います。本書は、指示を出す上司の「話し方」と、質問に答える部下の「答え方」では同じ言葉でもまるで使い方が違うと言います。その上で、間違ってはいないが相手に伝わらないのはなぜなのかを、1見開き1テーマの例題で徹底的に検討します。「言葉ってこう使うんだ」と直感的で、説教くさくなく、納得の連続です。「なぜ2番ではいけないのですか」。これに皆さんはなんと答えるでしょうか。

  • 創業経営者の言葉が持つ他を圧倒する強さと説得力

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    創業経営者の言葉が持つ 他を圧倒する強さと説得力

    2013年6月29日号  

    創業経営者の言葉には、他を圧倒する強さと説得力があります。『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』は、若さ故の失敗と挫折を繰り返しながらも志を実現しようとしている起業家の物語。学生時代にバングラデシュを訪れ、コメや麦はあるのに栄養失調の子どもが多いのは、ビタミンやミネラルが不足しているためと知ります。「何とかしたい」。その一念で学部を理系に変え、巡り合ったのがミドリムシでした。しかし事業化するための金も設備もない。そこに、皆さんもご存じのあの人、あの人たちが次々と出現して若い理想家の支援に乗り出します。

  • 所属する集団を超えられず考えたつもりにさせる「空気」

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    所属する集団を超えられず 考えたつもりにさせる「空気」

    2013年6月22日号  

    今月はまず、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』を。著者は、人々が内向的になる時代に低価格公演や物語消費でファンを捉えたAKB48は、「“デフレカルチャー”の産物」だったが、アベノミクスでトレンドが物質的消費に変わり、AKBのビジネスモデルは危機に晒されているといいます。本書で興味を引かれるのは内村鑑三の三角形理論を援用してAKBとファンを図式した部分。“身近なアイドルとの成長物語の共有”という「空気」の生成こそがAKBの強みだったと読み取れます。

  • 深い理解が生み出す軽妙な文章経営センスを高める六つの論理

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    深い理解が生み出す軽妙な文章 経営センスを高める六つの論理

    2013年6月15日号  

    ファン待望の新刊で、刊行されてすぐにベストセラー路線に乗ったのが『経営センスの論理』。前著『ストーリーとしての競争戦略』は、高価格の経営書としては異例のベストセラーになりましたが、本書は前著を補完する内容になっています。ウェブでのコラムをまとめたもので、経営センスを高める六つの論理が、「攻撃は最大の防御~極私的な事例(実は頭髪問題)で考える」といった調子で軽妙につづられていきます。それでいて内容は深い。深い理解と整理があってこその軽妙さです。個人的には第6章「思考の論理」での、スキルが身につかないのは、「論理を学ぶ」ことが身についていないからだ、という指摘にうなりました。

  • 相手に手間を取らせない具体的な提案こそ本物のマナー

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    相手に手間を取らせない 具体的な提案こそ本物のマナー

    2013年6月8日号  

    新入社員の皆さんも配属先が決まり、本格的な社会人生活が始まっていることでしょう。そうした時期にぜひお薦めなのが、『そこのあなた! その自己中(ひじょうしき)マナー、失礼です!!』。小うるさいおつぼね風のタイトルですが、内容は他のマナー本とは一味も二味も違います。単に「こうすべき」と説くのではなく、実践の場で、「なぜ、そうする必要があるのか」を考える構成になっているのです。例えば、「お手伝いすることはありませんか」は、どう評価されるべきか。本書は「×」です。それは、相手に仕事を探してもらう手間を取らせるからで、具体的な提案こそ相手の立場でのマナーだと説きます。

  • 身近なケースを基に考える「円満な相続」への準備

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    身近なケースを基に考える 「円満な相続」への準備

    2013年6月1日号  

    孫への教育資金の贈与非課税制度の創設、相続税基礎控除の縮小など相続絡みの税制改正が続き、実務本が好調です。『38歳からの相続』もベストセラー入りの勢い。40歳前後は、相続にはまだまだ縁遠い年頃と思われていますが、教育資金贈与など、親の協力が得られるならば「円満な相続の実現」への準備を始めるべき年頃だといいます。といっても制度の解説本・実務本ではなく、夫が突然死した場合、アラフォーの独身女性の場合など身近に見受けられるケースを基に、相続や税の仕組み、考え方を紹介します。

  • 本物志向も実は予定調和米国消費社会と意識の関係

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    本物志向も実は予定調和 米国消費社会と意識の関係

    2013年5月25日号  

    スターバックスには、味わい深いコーヒーが環境に配慮されたカップで用意されている。著者は、そこにはまさに本物の休息があるといいます。一方でそれは、本物志向といいながら予定された調和を欲望しているにすぎないとも指摘します。だから、『お望みなのは、コーヒーですか?』という書名も納得。本書は、スタバを分析対象にしたマーケティング論&社会論。米国では、楽しみを表す場合に一般名詞ではなく固有企業名が多いのはなぜなのか。スタバ、アップル、グーグル。米国社会の消費と人々の意識の関係が鮮明に描かれています。

  • 顧客と従業員を魅了するストーリーの語り方

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    顧客と従業員を魅了する ストーリーの語り方

    2013年5月18日号  

    S・ジョブズのプレゼン本がヒットして以降、ストーリーでビジネスを語ることに注目が集まっています。『リーダーはストーリーを語りなさい』は、まさにそうした要請に応える新刊です。基本はリーダーシップの本なのですが、ストーリーにどんな力があるかを示し、ストーリーのつくり方も詳細に説明します。しかも巻末には、本文で紹介したストーリーの状況別使い方や、ストーリー構成の早見表が付いていたりと至れり尽くせり。

  • 改善を通じて品質も向上する老舗社長の高齢者活用法

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    改善を通じて品質も向上する 老舗社長の高齢者活用法

    2013年5月11日号  

    4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されたのを機に、さまざまな実務書が出ていますが、『「意欲のある人、求めます。ただし60歳以上」』は、老舗金属加工会社の社長による“高齢者活用の勧め”。

  • 自らの思索や行動が育むリーダーシップの神髄

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    自らの思索や行動が育む リーダーシップの神髄

    2013年5月4日号  

    今回はリーダーシップ論の3冊をご紹介したいのですが、いずれも実践的な心構えや手法を描いたものではありません。一読するとスピリチュアルな著作かと勘違いしてしまいそうでもあります。しかし、「リーダーはなろうとしてなれるのではなく、自らの思索や行動の結果としてなる」というのが共通した主張です。

  • 共同体以外の人を“漂白”周縁から逆照射する社会の現実

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    共同体以外の人を“漂白” 周縁から逆照射する社会の現実

    2013年4月20日号  

    ダイヤモンド・オンラインの連載コラムをまとめた『漂白される社会』は、読み進むほどにタイトルの意味が感得され、深く引き込まれました。気鋭の社会学者は、売春島、脱法ドラッグ、ホームレスギャル、不法就労外国人など、社会の周縁にいる人たちへの取材を通して、私たちの「日常」社会の実態を逆照射します。自由や平和を追い求める動きの中で「周縁的な存在」は隔離・固定化・不可視化され、「存在しないこと」として「漂白」される社会。しかし「周縁の日常」こそがリアルな世界なのではないかとさえ思えます。

  • 公務員の常識を打ち破る「くまモン」プロジェクトの全貌

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    公務員の常識を打ち破る 「くまモン」プロジェクトの全貌

    2013年4月13日号  

    ゆるキャラの頂点に立つくまモン。関連商品の売上高は293億円に達し、熊本ブランドの向上に大きく貢献しました。その、くまモンプロジェクトの全貌を伝えるのが『くまモンの秘密』です。大阪でのマーケティング戦略の推移を、プロジェクト誕生に深く関わった放送作家・小山薫堂氏に報告する形での第一部。地元での人気獲得運動を遂行した熊本部隊が語る第二部。農協職員から東京大学教授、熊本県知事という異色の経歴を持ち、プロジェクトを強く牽引した蒲島郁夫知事によるリーダー論の第三部。自治体史上では例を見ない、公務員の常識を打ち破ったスタッフの発想と情熱が余すところなく伝わってきます。

  • ノーリスクで儲かる!本当に使える「コラボ」戦略

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    ノーリスクで儲かる! 本当に使える「コラボ」戦略

    2013年4月6日号  

    手にしてまず、「あぁ、こういう本ってなかった。どうして読者も欲しいって言わなかったのだろう」と感じたのが、『ノーリスクで儲かる仕組みをつくる「コラボ」の教科書』。縁のない企業同士が協力し、互いの知名度を生かして新しいファン層を開拓したりする。太宰治の『人間失格』のカバーに、『DEATH NOTE』の小畑健を起用して新たな太宰ファンを獲得した集英社文庫も、その一例です。これで、文庫本業界にカバー刷新ブームが起きました。本書は、コラボのための戦略を軸に、豊富な実例を織り交ぜて解説していきます。いずれも興味深く示唆に富んでおり、本当に使える戦略書となっています。

  • 楽しさが巡って戻ってくる周りも自分も幸せの仕事術

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    楽しさが巡って戻ってくる 周りも自分も幸せの仕事術

    2013年3月30日号  

    今月の一押し、かつ一言苦言は『事業再生のススメ』。著者は、弁護士と集客コンサルタントの2人。対談形式で、まず弁護士が、民事再生法や会社更生法について解説し、次にコンサルタントが事業立て直しのための売上高増加の勘所を解説します。「不渡りを出しても倒産するとは限らない」と帯にあるように、事業再生制度を前向きに活用していこうという趣旨で、濃い内容ですがとても読みやすく仕上がっています。

  • 技術進歩で加速する雇用喪失人は機械とどう協調すべきか

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    技術進歩で加速する雇用喪失 人は機械とどう協調すべきか

    2013年3月23日号  

    米国では、NYダウ平均株価の高値更新など景況感の回復が鮮明ですが、雇用総数に対する雇用回復度は低いままです。その背景にある理由は何なのか。景気循環説や景気停滞説などが説かれてきましたが、MITの経済学教授による『機械との競争』は、技術進歩の加速による雇用喪失説の立場に立ちます。

  • 起業で稼ぐシステムを大解剖一人でも食べていける知識

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    起業で稼ぐシステムを大解剖 一人でも食べていける知識

    2013年3月16日号  

    最近は、書評で取り上げられる前にツイッターで話題になり、初速がつく本があります。『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』という長いタイトルの本もそんな1冊。本書は、起業して稼ぐためのシステムを説きます。収益は、顧客・商品・課金手法・支払い方法・資源の五つの領域と、さらにそれぞれに存在する三つの細分項目を掛け合わせた15のパターンの絡み方で決まるといいます。それを実際の企業に当てはめて具体的に示します。一見、経営分析本のようですが、こういう視点で起業を説いた類書はなく新鮮。しかし本書に起業の悲壮感や緊張感はなく、今や起業は気軽なものなのだと妙に実感しました。

  • 安いだけでは支持されない“納得感”が決める物の価格

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    安いだけでは支持されない “納得感”が決める物の価格

    2013年3月9日号  

    安倍政権発足以来、「デフレ克服」が飛び交っていますが、物の価格とはどのように決まってきたのでしょうか。「価格は安いほうが支持される」との常識を覆すのが『価格の心理学』です。価格調査の専門家である著者の視点は、タイトルに「心理学」とあるように、価格の絶対値ではなく“納得感”にあります。例えば、毎月2万円近い電話料金を払っている人には、おサイフケータイで1000円を払うのは、さほど負担感がない。そこに、ケータイ払いでの価格を設定する妙がある。また、本命の商品を、どの価格帯の商品と並べれば一番売れるのか等々、価格と心理の関わりを詳細に解説していきます。「なるほどね」と、ちょっぴり高めの1600円にも納得です。

  • 日本企業の敗北の裏にあるコミュニケーションの衰退

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    日本企業の敗北の裏にある コミュニケーションの衰退

    2013年3月2日号  

    産業や企業の衰退の裏には、必ず組織内や顧客とのコミュニケーションの衰退があります。『メイド イン ジャパン 驕りの代償』でも、経営者の成功体験からくる驕りと横断的なコミュニケーションの弱体化が日本を代表する企業の敗北につながったと指摘します。電機や自動車を取材してきた著者は、成功体験がなかったが故に改革を推進できたゴーン日産と比較しつつ、パナソニックやシャープを俎上に載せ、危機の重大さを低く見積もってしまった経営の背景を探ります。成功を健全に否定した横断的なコミュニケーション風土と、エンジニアを育てる体制こそが産業復活の道だと訴えます。

定期購読キャンペーン

記者の目

  • 編集委員 藤田章夫

    新NISAを追い風にする保険業界のしたたかさ

     新NISAが1月からスタートし、保険の販売には逆風かな?と思っていたら、「むしろ追い風になっていますよ」との声が多数。
     資産運用の相談に来た人に、「投資信託は資産が減ることもありますが、変額保険の死亡保険金額には最低保証があります」と言えば、「保険の方がいいか」となるようです。
     本来は、資産を運用したいのか保障が欲しいのか、目的に応じて使い分けたいところですが、これがかなり難しい。
     そこで、保険ジャーナリストの森田直子さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、保険と運用それぞれの立場から対談を行っていただきました。面白過ぎて、対談時間はあっという間に過ぎました。ぜひご一読ください。

  • 副編集長 名古屋和希

    “予定調和”の買収は今後減少?

     第一生命ホールディングスが3月に福利厚生代行のベネフィット・ワンを買収しました。この買収劇は異例の展開をたどりました。
     先に買収を表明したのは医療情報サイト運営のエムスリーでした。そこに第一生命が参戦したのです。結局、エムスリーよりも好条件を提示した第一生命が買収戦を制しました。大企業による対抗的な買収は極めて珍しいものです。
     従来、事業会社はイメージ悪化などを恐れ、「敵対的」な買収を控えてきました。ただ、近年はルール整備などを背景に「同意なき買収」が広がる機運が出ています。買収が活発になれば、企業・業界の新陳代謝も促せます。今後、“予定調和”の買収は減っていくかもしれません。

最新号の案内24年4月27日・5月4日合併特大号

表紙

特集保険vs新NISA 今「契約したい保険」は? 生保商品ベスト&ワーストランキング

保険とNISA、どちらに資金を振り向けるべきか──。新NISAをきっかけに投資熱が高まる中、多くの人が抱える悩みだ。そこで保険とNISAで迷ったときの考え方や保険の見直し方、保険のプロ29人が辛口採点した生命保険商品ランキングを、業界の深部…

特集2変局 岐路に立つNHK

NHKが大きな岐路に立たされている。今国会で放送法改正案が可決されれば、ネット視聴も受信料徴収の対象となる。一方で、今後、NHKの受信料収入は人口減やテレビ離れを背景に先細る可能性が高い。職員数1万人を誇る巨大公共放送機関は、「みなさまのN…