記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』74

  • 第二章 運命の日[第34回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第34回]

    2016年07月09日号  

    バッテリーが接続できたことで、一部の計器が復旧したという報告が各管理棟から相次ぎ、免震重要棟内にも活気が戻ってきた。串村所長の不穏な話で動揺していた秀樹も、ようやく落ち着きを取り戻した。「三号機の中央制御室で一部の計器に通電」「一号機、バッテリーが復旧して、格納容器内の圧力計が作動!」串村から渡されたICレコーダーに状況をしっかり記録するため、秀樹は耳にした情報をすべて復唱していた。

  • 第二章 運命の日[第33回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第33回]

    2016年07月02日号  

    官邸地下の危機管理センターでは、原子力安全委員会の藤倉達之助(ふじくら・たつのすけ)委員長の事故分析と解説が続いていた。原子力の専門家ではあるが、実務的な経験がなく、原発事故への対応について詳しいとは思えない。にもかかわらず、役職としては政府の事故対応に適切なアドバイスをする立場にある。

  • 第二章 運命の日[第32回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第32回]

    2016年06月25日号  

    電源車による電力供給は不可能という事態が明らかになって、免震重要棟内の所員の我慢が限界を超えた。誰もが苛立ち、浮き足立っている。

  • 第二章 運命の日[第31回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第31回]

    2016年06月18日号  

    総理秘書官室では、地下の危機管理センターから戻った湯河を、首都電力原子力発電所本部管理部長の森上が待ち受けていた。 「電源車の到着で、事態は収拾しましたか」 「ちょっと別室で話せませんか」 顔つきだけで、ろくでもない話だと推測できた。

  • 第二章 運命の日[第30回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第30回]

    2016年06月11日号  

    免震重要棟内の緊急対策室は静寂に包まれていた。秀樹がブタの鼻の確認から戻ってから、約三時間が経過していた。当初は、緊迫した指示と報告が飛び交っていた室内も、手を尽くし、後は結果を待つしかない状況になっている。そして沈黙が多くなった。

  • 第二章 運命の日[第29回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第29回]

    2016年06月04日号  

    枯淡楼には、太平洋を一望できる露天風呂がある。鷲津は久しぶりに、その贅沢を一人で味わっていた。海風が強く肌寒かったが、岩風呂に体を沈めると、すぐに血行が良くなった。長旅の疲れと地震による緊張が徐々にほぐれていく。しばらく目を閉じ、頭と体が弛緩するに任せた。頬を撫でる冷たい風も心地良い。

  • 第二章 運命の日[第28回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第28回]

    2016年05月28日号  

    秀樹が報告する間、精神を集中させるためか能登は目を閉じていた。 「そうか、良かった……。本当に良かった。郷浦君、谷原、ご苦労さん」 「お役に立てて嬉しいです」 能登と目が合った瞬間、秀樹は大事な使命を全うした充実感を覚えた。ただ、一つ小さな蟠(わだかま)りがある。それを伝えるべきか迷いながら、結局は口に出せなかった。

  • 第二章 運命の日[第27回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第27回]

    2016年05月21日号  

    鷲津が熱海の旅館・枯淡楼に到着したのは、午後六時頃だった。建設されたのは戦前で、当初は旧財閥の迎賓館だった。戦後は旅館として利用され、バブル経済崩壊後に鷲津が購入した。施設の半分は従来通りの旅館業を続け、残りを自身の隠れ家的施設として利用していた。

  • 第二章 運命の日[第26回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第26回]

    2016年05月14日号  

    超満員のエレベーターから吐き出されて、貴子はようやく六本木ヒルズの一階に降り立った。建物は最新の免震構造が施されているらしいが、おかげで長時間揺れ続けたせいで、船酔いのような不快さがある。自家発電システムが作動したので停電はすぐに解消されたが、最上階にいた貴子がエレベーターに乗り込むまでには、長時間待たされた。しかも、我先に逃げようとする人のせいで、エレベーターホールは息もできないほどのすし詰め状態だった。

  • 第二章 運命の日[第25回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第25回]

    2016年04月30日号  

    携帯電話に着信があった。見ると、相手は東京本社社会部長とある。「越智(おち)だ。所長がSBOは収拾できると明言している根拠に心当たりはないのか」まず、記者の安否確認だろとは思ったが、北村は素直に応じた。

  • 第二章 運命の日[第24回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第24回]

    2016年04月23日号  

    串村所長は構外に急ぐ人の流れに逆らうように免震重要棟に向かっていた。彼に続く秀樹は、辺りが妙に静かなのに気づいた。一時(いっとき)鳴り響いていたサイレンがやんでいた。それに、すれ違う従業員の誰もが口をつぐんでいる。停電のせいだろうか。

  • 第二章 運命の日[第23回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第23回]

    2016年04月16日号  

    管理棟内は薄暗かった。地震の影響で停電したため、非常用電源の一部を利用して、最小限の明かりを灯しているからだ。ロビーに散乱している書類や横倒しになっている棚などに気をつけながら、秀樹は恐る恐る廊下を進んだ。

  • 第二章 運命の日[第22回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第22回]

    2016年04月09日号  

    Jファームからイチアイ(1I、首都電力磐前第一原子力発電所)までは、二〇キロ足らずの距離だ。国道を北上した秀樹は、周囲の様子に気を配りながら、法定速度内で車を走らせた。道路や周辺に、地震による被害は見られない。交通量も普段と変わらない。民家から屋外に出て雑談をしている住民の姿は見えるが、さして緊迫感があるようには見えない。相変わらずラジオでは津波に警戒するように連呼している。

  • 第二章 運命の日[第21回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第21回]

    2016年04月02日号  

    揺れが落ち着いたので、鷲津は社用車に乗り込んだ。特別仕様のエルグランドは、リムジン並みの乗り心地に改良されており、モニターやワイファイ機能も装備してある。首都高速道路は通行止めになっていた。車載テレビで、地震の状況を眺めていた鷲津は、熱海に向かうよう運転手に命じた。そこには所有する温泉宿がある。

  • 第二章 運命の日[第20回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第20回]

    2016年03月26日号  

    あかねの左足がインステップで蹴り上げたボールは、三人の“壁”の頭上を軽やかに越え、ゴールの右コーナーに突き刺さった。秀樹は、目の当たりにした見事なシュートに素直に感動した。ボールがゴールネットを揺らした衝撃のせいか、前で撮影していたカメラマンがよろめいた。どんだけ凄いんだ、あかねのシュートは。そう思った矢先、体のバランスが崩れた。地面が揺れている。地震?

  • 第二章 運命の日[第19回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第19回]

    2016年03月19日号  

    「相談というのはだね、貴子ちゃんにもその審議会のメンバーに入って欲しいんだ」向坂は軽口のように振ってきたが、大変な依頼だった。「ご冗談を」「この審議会には、世界の観光事情を熟知している君のような若者が不可欠なんだよ」

  • 第二章 運命の日[第18回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第18回]

    2016年03月12日号  

    通信局兼自宅を出た途端、あまりの寒さに北村は身震いした。三月中旬だというのに、春の気配は微塵もない。花岡町は前任地の気仙沼市より一五〇キロ以上は南下しているのに、寒さは変わらない。

  • 第二章 運命の日[第17回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第二章 運命の日[第17回]

    2016年03月05日号  

    鷲津はうっすらと夜が明け始めた太平洋上空にいた。眼下には海が広がっている。日本電力(Jエナジー)を買収しようとした際に米国政府の不穏な動きを知り、一年余りをかけて、もう一度身辺のガードを徹底した。その間、目立った動きも控えた。

  • 第一章 崩壊前夜[第16回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第16回]

    2016年02月27日号  

    タクシーがノイバイ国際空港に到着したと同時に、湯河の携帯電話が鳴った。またか。資源エネルギー庁次長の植田だ。無視してやろうかとも思ったが、そういう時に限って重大事であったりする。「湯河です」せめてもの抵抗で、留守電メッセージに切り換わる寸前に応対した。 「帰国は不要だ」 思わず、聞き返した。

  • 第一章 崩壊前夜[第15回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第一章 崩壊前夜[第15回]

    2016年02月20日号  

    経団連会館の廊下を歩きながら、鷲津は昨夜の電話について考えていた。どうやって調べたのか、濱尾本人が鷲津の携帯電話に直接かけてきて、「明日、お会いする時間を戴けないか」と言われた。何の用かと返すと「あなたが今、画策しておられる案件についてです」とだけ告げられた。しらばっくれても無駄だと判断して、濱尾と会うことにしたのだった。

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記者の目

  • 副編集長 藤田章夫

    個人としては通算11本目となる保険特集です

     2006年に「週刊ダイヤモンド」編集部に異動になってからほぼ毎年、保険特集を作ってきました。今号を入れて、その数11本。
     それぞれの特集に思い入れがありますが、印象深い号を思い起こせば、医療保険に絞り込んだ「医療保険に気をつけろ!」(06年)、タイトルが刺激的だった「騙されない保険」(12年)、初めて企画から構成まで全てを手掛けた「保険激変!」(15年)です。
     94ページもの大特集となった今年の保険特集も、印象に残る号になりそうです。
     そして、この号をもって、保険担当が中村記者に代わります。とはいえ金融全般を担当しますので、来年の保険特集100ページ(?)も中村記者&宮原記者と共に作ります。

  • 編集長 深澤 献

    母が買った「顧客本位」に反した個人年金保険

     傘寿を迎えた母が最近、なけなしの老後資金を、銀行に勧められるまま豪ドル建ての個人年金保険につぎ込んだとのこと。
     金融庁はこのところ、「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」の旗印の下、金融機関に顧客本位の業務運営を求めています。
     母が買った商品はまさに、外国債券と投資信託、掛け捨ての死亡保険をあえてパッケージ型にして割高の手数料を徴収する顧客本位から懸け離れたもの。昨年9月に出た金融庁の「金融レポート」でも、この手の商品を「顧客のニーズよりも、販売・製造者側の論理で金融サービスを提供しているのではないか」とバッサリ斬っています。購入時に相談に乗ってやれなかったのが悔やまれます。

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