記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』105

  • 第五章 激震  [第85回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第85回] 

    2017年07月22日号  

    河口湖近くの東海林邸を出た車は、熱海を目指した。鷲津が所有する温泉旅館でサムと堀が待っている。リンは、まもなく成田から飛び立つ便でワシントンDCに向かう。原子力発電所の事故に対しての米国関係者の考えを探り、今後の資金調達について算段してくる。東海林邸を辞するのは、骨が折れた。ぜひ泊まってくれと、しつこく引き止められ、「どうしても今日中にやらなければならない重要案件がある」と言っているのに、東海林はなかなか納得しなかった。

  • 第五章 激震  [第84回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第84回] 

    2017年07月15日号  

    気まずいはずの晩餐は、思いがけず和やかなムードで始まった。晩餐用の長テーブルの大半が空席という寂しい状況だったが、東海林の上機嫌が、それを吹き飛ばした。テーブルに着いているのは、六人だ。主賓席に鷲津が、正面にホスト役の東海林が陣取った。東海林の両側には、着物姿の粋な女将風の女性とブロンド美人が座っている。ブロンドの隣には前島がいる。そして、鷲津から一席空けた右側に、濱尾が愛想笑いを浮かべて座っていた。

  • 第五章 激震  [第83回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第83回] 

    2017年07月08日号  

    東海林と向き合う時は、挑発しないこと──。リンとサムから注意されていたのに、俺は爺さんの機嫌を損ねたかも知れない。先程までの親しげな表情は消え、東海林は鷲津を睨み付けてきた。東海林の顔は、シミと皺の芸術のようだった。それが人生で刻んできた東海林の軌跡なのだろう。

  • 第五章 激震  [第82回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第82回] 

    2017年07月01日号  

    鷲津を乗せた年代物のトヨタ・センチュリーは、首都高を抜けて中央道に入った。東海林完爾(しょうじ・かんじ)代議士が河口湖の近くに所有する別宅に向かっているようだ。東海林との面談は、鷲津が赤坂に所有する料亭「ぽん太」で行われる予定だった。ところが、東海林の秘書から「本日、東海林は東京へ行けない。迎えを出すのでそれにご乗車戴きたい」という半ば強制的な変更が告げられた。

  • 第五章 激震  [第81回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第81回] 

    2017年06月24日号  

    「湯河君、ちょっといいかね」廊下を歩く湯河を、背後から生駒が呼び止めた。湯河が振り向くと、生駒は「ついて来い」と言って非常階段の方に向かった。そこから一フロア下りると、生駒は会議室の札を「使用中」に変えて、中に入った。窓が一つしかない部屋は薄暗い。それでも生駒は明かりを点けなかった。震災以降、庁舎内はギリギリのレベルまで節電しているためだ。

  • 第五章 激震  [第80回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第80回] 

    2017年06月17日号  

    内閣府に出勤する途中で、湯河は資源エネルギー庁長官秘書から“本省の大臣室にお越し戴きたい”というメールを受けた。おそらくは、鷲津が首都電力株大量保有を発表した件に関してだろうと察した。

  • 第五章 激震  [第79回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第79回] 

    2017年06月10日号  

    早朝の柔らかい日差しの中、秀樹は首都電力が保有する合宿所の駐車場で、入念なストレッチをしていた。昨夜は早めに寝たのだが、些細な音にでも過敏に反応してベッドから飛び降りてしまう。そのため、徹夜した朝のように体がだるい。体がほぐれるにつれ、頭が徐々に働き出した。そろそろかなと思った時、通用口が静かに開き、黒ずくめのウインドアップを着た姿の人影が現れた。この人物を待っていた。そして、人影はそのまま走り出した。秀樹も続いた。

  • 第五章 激震  [第78回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第78回] 

    2017年06月03日号  

    朝刊最終版の締め切り時間が迫っている。北村としては、一刻も早く原稿を片付けてビールを飲みたい気分なのだが、編集局次長の志摩が陣頭指揮を執る首都電買収取材班のミーティングが終わらない。「俺が求めているのは、噂話や見込みじゃない。ファクトに裏付けられた目が覚めるような原稿だ」志摩はそう怒鳴るが、記者たちの反応は鈍かった。誰も彼もが疲れているのだ。

  • 第五章 激震  [第77回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第77回] 

    2017年05月27日号  

    女将や従業員が全員引き上げた後、ミーティングが始まった。鷲津、リン、サム、前島、母袋の五人が好みの酒を手に、離れの一室に集まった。芝野と食事した部屋とは別の洋室だ。「思ったよりも、宮永大臣の動きが早かったですね」前島が口火を切った。

  • 第五章 激震  [第76回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第76回] 

    2017年05月20日号  

    久々に赤坂の料亭「ぽん太」の離れで、鷲津は三味線を弾いていた。腐れ縁の元バンカー、飯島が囲っていた芸者の名を冠する店は、鷲津が潰れかけていた料亭を購入し、飯島にプレゼントしたものだ。現在もオーナーは飯島だが、鷲津は経営責任者として存続に力を注いでいる。

  • 第五章 激震  [第75回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第75回] 

    2017年05月13日号  

    首都電力幹部を交えて中禅寺湖ミカドホテルで始まったミーティングは、収束する気配すらなかった。中禅寺湖ミカドホテルは、濱尾会長から直々に懇請されて心身を病んだ首都電社員を受け入れている。それに伴う課題が山積していたのだ。受け入れた社員の精神状態が改善せず、逆に悪化しているケースも多く、既にホテルで静養というだけでは限界が来ていた。

  • 第五章 激震  [第74回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第74回] 

    2017年04月29日号  

    大臣室で鷲津の記者会見を、芝野は興味深く見ていた。買収すると決めているにもかかわらず、鷲津はいかにも善人面して「首都電を応援するために株を買い支えている」と断言した。記者も次々と鋭い質問をぶつけるが、鷲津は全く意に介さない。とはいえ、この段階で首都電力株を大量保有していると公表するのはさすがに不本意だったのではないだろうか。

  • 第五章 激震  [第73回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第73回] 

    2017年04月22日号  

    秀樹は、鷲津の記者会見を濱尾邸内で見ていた。買収対策本部の五〇人近いメンバーがひしめく中、前方のスクリーンに小柄な鷲津が映った。世界最強などと呼ばれる企業買収者らしからぬ容姿だな。こんな人物が、世界中の超一流企業をきりきり舞いさせたというのか。

  • 第五章 激震  [第72回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第72回] 

    2017年04月15日号  

    「只今からサムライ・キャピタル代表取締役社長、鷲津政彦による記者会見を開催致します」司会役を務める赤星の紹介で、鷲津は雛壇に上がった。一斉にストロボが焚かれた。会場を見渡すと、記者で埋め尽くされている。深々と一礼して着席したら、再びストロボの洗礼を受けた。

  • 第五章 激震  [第71回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第71回] 

    2017年04月08日号  

    一一日、Jファームを追い出されたと思ったら、そのまま本社帰還命令が出た。家族が磐前県内にいるのを理由に突っぱねたのだが、配慮するのでひとまず本社に上がってこいの一辺倒で従わざるを得なかった。言われるままに東京に向かい、その日の夜に丸の内の暁光新聞東京本社に顔を出すと、志摩が待っていた。

  • 第五章 激震  [第70回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第70回] 

    2017年04月01日号  

    湯河からの電話を終えても、芝野はすぐに鷲津に連絡を入れなかった。気後れしたからではない。鷲津が首都電力を狙っているのは、薄々気づいていた。今、この件を彼に問い質したところで、何も解決しないだろう。このところ、鷲津がまるで市場の守護神であるかのように持て囃すメディアが増えていた。巨大権力を有する大投資家や企業に立ち向かい、相応の成果を上げたことが評価されている。

  • 第五章 激震  [第69回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第69回] 

    2017年03月25日号  

    若田に教えられて住所は分かっていたが、濱尾の自宅を訪れるのは、初めてだった。高い塀に囲まれた豪邸は、個人の邸宅というより要塞のようだ。幅一〇メートルはありそうな鋼鉄製のスライド式門扉の横にあるインターフォンを押すと、すぐに女性の声で応答があった。

  • 第五章 激震  [第68回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第68回] 

    2017年03月18日号  

    秀樹はまた、あの夢を見ていた──。闇の中、轟音と共に免震重要棟が激しく上下左右に揺さぶられた。そして、いきなり屋根が吹き飛ぶ。見上げた空はオレンジ色に染まり、熱風が秀樹に襲いかかってきた。汗だくになって目覚めると、携帯電話が鳴っていた。

  • 第四章 解体か創造か  [第67回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第67回] 

    2017年03月11日号  

    鷲津は、台東区今戸の桜橋桟橋にいた。保有する屋形船にこれから乗り込んで、隅田川をゆっくりと竹芝まで下り、サムとリンと夕食を楽しむのだ。屋形船は密談や接待に重宝する。最初に手に入れたのは、一九九〇年代の終わり頃だった。船場の豪商だった祖父も、屋形船を持っていた。鷲津にも幼い頃に大阪で船遊びを楽しんだ記憶がある。

  • 第四章 解体か創造か  [第66回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第66回] 

    2017年03月04日号  

    「突然、失礼します! 首都電力の郷浦秀樹と申します! 芝野さんに質問がございます」そう叫んで立ち上がった青年の顔をよく見ようと、芝野は目を細めた。まだ、子どものような若者だ。それにしても首都電も大胆なことをする。大勢の記者の前で質問させるとは。彼が、このあと、メディアの餌食になるのも織り込み済みなんだろうか。

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記者の目

  • 編集長 深澤 献

    個別株は禁止だけど、仮想通貨は?

    当編集部の部員は社内規定で個別株の売買を禁止されています。株価を左右するようなスクープネタをつかんだ場合、“インサイダー”になりうるからです。
     一方、一記者の力ではどうにも操作できない外国為替取引などは禁止していません。その意味では、仮想通貨についても対象外なのですが、ちょっとした情報でも急騰を招く今の過熱ぶりを見て、扱いに迷っています(校了直前に↓の原稿を読み苦笑しました)。
     もっとも、誰も知らないネタがあるなら、それを基に私腹を肥やそうとたくらむ前に、とっとと記事にして世に知らしめたいと考えるのが記者という生き物。ルールで縛るのも必要ですが、「何に喜びを感じる集団であるか」が一番大事だったりします。

  • 編集部 田上貴大

    〝爆騰〟ビットコインには手を出せずじまい

    「田上さんも買ってみてはどうですか?」
     今年9月、特集に向けて動き始めたころの話です。ある仮想通貨取引所の役員にビットコインを勧められました。
     当時は1ビットコイン=約45万円。すでに「これはバブルですよ」という声もチラホラと耳にしていたので「30万円台まで下がったら買おうか」と皮算用をしていました。
     残念ながら、その後の3カ月で価格は右肩上がり。時々で「70万円まで戻ったら買おう」「90万円まで戻ったら、そのときこそ……」と淡い期待を寄せるも思いは届かず。結局、幾つか通貨は買えども本丸の〝爆騰〟ビットコインには手を出せずじまいでした。
     バブルか否かの議論はさておき、私は投資そのものに不向きなようです。

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