記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』97

  • 第五章 激震  [第77回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第77回] 

    2017年05月27日号  

    女将や従業員が全員引き上げた後、ミーティングが始まった。鷲津、リン、サム、前島、母袋の五人が好みの酒を手に、離れの一室に集まった。芝野と食事した部屋とは別の洋室だ。「思ったよりも、宮永大臣の動きが早かったですね」前島が口火を切った。

  • 第五章 激震  [第76回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第76回] 

    2017年05月20日号  

    久々に赤坂の料亭「ぽん太」の離れで、鷲津は三味線を弾いていた。腐れ縁の元バンカー、飯島が囲っていた芸者の名を冠する店は、鷲津が潰れかけていた料亭を購入し、飯島にプレゼントしたものだ。現在もオーナーは飯島だが、鷲津は経営責任者として存続に力を注いでいる。

  • 第五章 激震  [第75回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第75回] 

    2017年05月13日号  

    首都電力幹部を交えて中禅寺湖ミカドホテルで始まったミーティングは、収束する気配すらなかった。中禅寺湖ミカドホテルは、濱尾会長から直々に懇請されて心身を病んだ首都電社員を受け入れている。それに伴う課題が山積していたのだ。受け入れた社員の精神状態が改善せず、逆に悪化しているケースも多く、既にホテルで静養というだけでは限界が来ていた。

  • 第五章 激震  [第74回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第74回] 

    2017年04月29日号  

    大臣室で鷲津の記者会見を、芝野は興味深く見ていた。買収すると決めているにもかかわらず、鷲津はいかにも善人面して「首都電を応援するために株を買い支えている」と断言した。記者も次々と鋭い質問をぶつけるが、鷲津は全く意に介さない。とはいえ、この段階で首都電力株を大量保有していると公表するのはさすがに不本意だったのではないだろうか。

  • 第五章 激震  [第73回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第73回] 

    2017年04月22日号  

    秀樹は、鷲津の記者会見を濱尾邸内で見ていた。買収対策本部の五〇人近いメンバーがひしめく中、前方のスクリーンに小柄な鷲津が映った。世界最強などと呼ばれる企業買収者らしからぬ容姿だな。こんな人物が、世界中の超一流企業をきりきり舞いさせたというのか。

  • 第五章 激震  [第72回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第72回] 

    2017年04月15日号  

    「只今からサムライ・キャピタル代表取締役社長、鷲津政彦による記者会見を開催致します」司会役を務める赤星の紹介で、鷲津は雛壇に上がった。一斉にストロボが焚かれた。会場を見渡すと、記者で埋め尽くされている。深々と一礼して着席したら、再びストロボの洗礼を受けた。

  • 第五章 激震  [第71回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第71回] 

    2017年04月08日号  

    一一日、Jファームを追い出されたと思ったら、そのまま本社帰還命令が出た。家族が磐前県内にいるのを理由に突っぱねたのだが、配慮するのでひとまず本社に上がってこいの一辺倒で従わざるを得なかった。言われるままに東京に向かい、その日の夜に丸の内の暁光新聞東京本社に顔を出すと、志摩が待っていた。

  • 第五章 激震  [第70回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第70回] 

    2017年04月01日号  

    湯河からの電話を終えても、芝野はすぐに鷲津に連絡を入れなかった。気後れしたからではない。鷲津が首都電力を狙っているのは、薄々気づいていた。今、この件を彼に問い質したところで、何も解決しないだろう。このところ、鷲津がまるで市場の守護神であるかのように持て囃すメディアが増えていた。巨大権力を有する大投資家や企業に立ち向かい、相応の成果を上げたことが評価されている。

  • 第五章 激震  [第69回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第69回] 

    2017年03月25日号  

    若田に教えられて住所は分かっていたが、濱尾の自宅を訪れるのは、初めてだった。高い塀に囲まれた豪邸は、個人の邸宅というより要塞のようだ。幅一〇メートルはありそうな鋼鉄製のスライド式門扉の横にあるインターフォンを押すと、すぐに女性の声で応答があった。

  • 第五章 激震  [第68回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第68回] 

    2017年03月18日号  

    秀樹はまた、あの夢を見ていた──。闇の中、轟音と共に免震重要棟が激しく上下左右に揺さぶられた。そして、いきなり屋根が吹き飛ぶ。見上げた空はオレンジ色に染まり、熱風が秀樹に襲いかかってきた。汗だくになって目覚めると、携帯電話が鳴っていた。

  • 第四章 解体か創造か  [第67回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第67回] 

    2017年03月11日号  

    鷲津は、台東区今戸の桜橋桟橋にいた。保有する屋形船にこれから乗り込んで、隅田川をゆっくりと竹芝まで下り、サムとリンと夕食を楽しむのだ。屋形船は密談や接待に重宝する。最初に手に入れたのは、一九九〇年代の終わり頃だった。船場の豪商だった祖父も、屋形船を持っていた。鷲津にも幼い頃に大阪で船遊びを楽しんだ記憶がある。

  • 第四章 解体か創造か  [第66回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第66回] 

    2017年03月04日号  

    「突然、失礼します! 首都電力の郷浦秀樹と申します! 芝野さんに質問がございます」そう叫んで立ち上がった青年の顔をよく見ようと、芝野は目を細めた。まだ、子どものような若者だ。それにしても首都電も大胆なことをする。大勢の記者の前で質問させるとは。彼が、このあと、メディアの餌食になるのも織り込み済みなんだろうか。

  • 第四章 解体か創造か  [第65回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第65回] 

    2017年02月25日号  

    昼食を終え自席に戻ると、秀樹は首都電力会長室長の丸鍋に呼ばれた。濱尾が呼んでいるらしい。記者会見で、容赦なく突き上げられたにもかかわらず、濱尾には疲労の色が見られない。会長室付となって日は浅いが、濱尾のタフさと精神力の強さには、目を見張るばかりだ。松永安左エ門とタイプは違うが、人の上に立つリーダーとしての威厳というかオーラを持つ人物として、秀樹は濱尾に尊敬の念を抱き始めていた。

  • 第四章 解体か創造か  [第64回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第64回] 

    2017年02月18日号  

    原発事故の最前線で取材をしている記者にとって北村の記事は、衝撃的だったと同時に、顰蹙ものだった。「どうやってオフサイトセンター取材の許可をもらったんですか」という質問は穏便な方だ。「あんなスタンドプレイが許されると思うのか」と怒りをぶつけてきた記者も数人いた。さらには、緩やかに形成されていたJファーム記者クラブの幹事社から「当分の間、記者クラブへの出入り禁止」を宣告された。

  • 第四章 解体か創造か  [第63回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第63回] 

    2017年02月11日号  

    “そもそも我が社が潰れたら、誰が首都圏に電力を供給するんです”湯河は永田町の内閣府庁舎内のイチアイ対で、首都電力の記者会見映像を見ていた。歌川が記者に紛れて会見場で撮影してきたものだ。そしてこの濱尾の発言に強い怒りを覚えた。「何これ! どういう思考回路をしていれば、こんな傲慢な発言が出来るわけ!」佐久間とは普段からソリが合わないと感じていたが、この怒りは、湯河と同じだ。

  • 第四章 解体か創造か  [第62回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第62回] 

    2017年02月04日号  

    記者会見場のステージに上がった濱尾は、まるで臣下を睥睨するかのように会場を見渡してから席に着いた。舞台袖から様子を見ていた秀樹は、なぜ会長があれほど堂々と出来るのか、不思議でならなかった。首都電力東京本社の大会議室には、一〇〇人を超える報道陣が集まっている。濱尾が姿を現した瞬間には、ストロボの光が稲妻よりも凄まじく濱尾に浴びせられた。しかし、濱尾はまばたきもせずに超然としている。そして、マイクを手にすると、落ち着いた口調で話し始めた。

  • 第四章 解体か創造か  [第61回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第61回] 

    2017年01月28日号  

    腕時計のアラームで目を覚ますと、北村は寝袋の中で、指先を動かして血行を促した。フルフェイスの防寒用マスクと毛糸の帽子を被っていたが、夜明け前の寒さは尋常ではない。春まだ遠い磐前県内で暖房もなく冷たい床に転がっているのだ。体の芯まで凍てつく寒さは、火の気なしでは耐えられるものではない。ゆっくりと時間をかけて全身をほぐし、寝袋から這い出た。そして、寝袋を丁寧に丸めると靴下を二重にはいて駐車場に向かった。

  • 第四章 解体か創造か  [第60回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第60回] 

    2017年01月21日号  

    同じ空間にいるだけでも、周囲に緊張が走る人物──。首都電力の会長、濱尾はそういうタイプだと、湯河は改めて思った。原子力事故対策及び調査担当大臣の宮永に、濱尾本人が連絡してきて、この日の会談となった。しかも、会談場所は、首都電の本社ではない。濱尾自身が霞が関の内閣府まで出向いてきたのだ。いまだに原発事故が収束しないのが申し訳ないからというような、殊勝な理由とは思えない。下心があってのことだろう。

  • 第四章 解体か創造か  [第59回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第59回] 

    2017年01月14日号  

    「先程湯河君から電話があって、来週には事故調を立ち上げたいと言ってきましたよ」芝野が現れるなり、鷲津に言った。イチアイ(1I)(首都電力磐前第一原子力発電所)事故調査委員会との連絡窓口として借りた浜松町の雑居ビルの一室で、会う約束をしていたのだ。「どういうことです」想定内ではあったが、鷲津としては理由が知りたい。「首都電の濱尾さんが、事故調を立ち上げると言い出したらしい。その上、官邸や与党内部からの雑音も、色々と増えているようだ」

  • 第四章 解体か創造か  [第58回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第58回] 

    2016年12月31日号  

    四月一日付で、内閣府に異動となった湯河は、週明けの月曜日に初登庁した。向かう部署は、「首都電力磐前第一原子力発電所事故の収束及び原子力発電所事故の再発を防止するため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整対策室」、通称「イチアイ対」の名で発足したばかりの組織だった。イチアイ対は、四月一日付で行政担当特別顧問から、内閣府特命担当大臣(原子力事故対策及び調査担当)となった宮永の直轄組織で、湯河は室長に就任した。

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記者の目

  • 編集長 深澤 献

    電気自動車は欲しいけれど……

    もう20年以上前の話ですが、高速道路を運転中、急にエンジンが止まり、慌てて路肩に緊急停車したことがあります。原因はダイナモ(発電機)の故障。JAFの救援を受けました。  次の高速出口までけん引してもらったのですが、車って〝停電〟すると不便ですね。当時は珍しいデジタル表示だったスピードメーターは真っ暗なまま。ステアリングもブレーキもパワーアシストがないから重いのなんの、運転しにくいことこの上ない。  極め付きは料金所。けん引されていても料金を払うのは仕方ないとしても、電気がないとパワーウインドーが開かない。ドアを開け、一度外に出るしかありませんでした。電気自動車、欲しいけど壊れたときが心配です。

  • 副編集長 浅島亮子

    中国で説明できるEVシフト

    電気自動車(EV)シフトの波は3者がつくりました。①自国の自動車産業を世界一にしたい中国、②ディーゼル不正をEVで挽回したい独フォルクスワーゲン(VW)、③ベンチャーを卒業したい米テスラがそうです。  では次の展開はどうなるか。VWもテスラも照準を定めているのは中国です。ちなみに、テスラの筆頭株主は中国ITジャイアントのテンセント。自動運転や人工知能など新技術を持つベンチャーに多数投資している企業です。  結局、産業界で起きるゲームチェンジが中国で説明できてしまうことに、今更ながら恐れを覚えます。過去最悪販売を記録した3カ月前の「中国特集」をどう反省すれば興味を持っていただけるのか、悩みは深いです。

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