記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』82

  • 第五章 激震  [第82回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第82回] 

    2017年07月01日号  

    鷲津を乗せた年代物のトヨタ・センチュリーは、首都高を抜けて中央道に入った。東海林完爾(しょうじ・かんじ)代議士が河口湖の近くに所有する別宅に向かっているようだ。東海林との面談は、鷲津が赤坂に所有する料亭「ぽん太」で行われる予定だった。ところが、東海林の秘書から「本日、東海林は東京へ行けない。迎えを出すのでそれにご乗車戴きたい」という半ば強制的な変更が告げられた。

  • 第五章 激震  [第81回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第81回] 

    2017年06月24日号  

    「湯河君、ちょっといいかね」廊下を歩く湯河を、背後から生駒が呼び止めた。湯河が振り向くと、生駒は「ついて来い」と言って非常階段の方に向かった。そこから一フロア下りると、生駒は会議室の札を「使用中」に変えて、中に入った。窓が一つしかない部屋は薄暗い。それでも生駒は明かりを点けなかった。震災以降、庁舎内はギリギリのレベルまで節電しているためだ。

  • 第五章 激震  [第80回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第80回] 

    2017年06月17日号  

    内閣府に出勤する途中で、湯河は資源エネルギー庁長官秘書から“本省の大臣室にお越し戴きたい”というメールを受けた。おそらくは、鷲津が首都電力株大量保有を発表した件に関してだろうと察した。

  • 第五章 激震  [第79回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第79回] 

    2017年06月10日号  

    早朝の柔らかい日差しの中、秀樹は首都電力が保有する合宿所の駐車場で、入念なストレッチをしていた。昨夜は早めに寝たのだが、些細な音にでも過敏に反応してベッドから飛び降りてしまう。そのため、徹夜した朝のように体がだるい。体がほぐれるにつれ、頭が徐々に働き出した。そろそろかなと思った時、通用口が静かに開き、黒ずくめのウインドアップを着た姿の人影が現れた。この人物を待っていた。そして、人影はそのまま走り出した。秀樹も続いた。

  • 第五章 激震  [第78回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第78回] 

    2017年06月03日号  

    朝刊最終版の締め切り時間が迫っている。北村としては、一刻も早く原稿を片付けてビールを飲みたい気分なのだが、編集局次長の志摩が陣頭指揮を執る首都電買収取材班のミーティングが終わらない。「俺が求めているのは、噂話や見込みじゃない。ファクトに裏付けられた目が覚めるような原稿だ」志摩はそう怒鳴るが、記者たちの反応は鈍かった。誰も彼もが疲れているのだ。

  • 第五章 激震  [第77回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第77回] 

    2017年05月27日号  

    女将や従業員が全員引き上げた後、ミーティングが始まった。鷲津、リン、サム、前島、母袋の五人が好みの酒を手に、離れの一室に集まった。芝野と食事した部屋とは別の洋室だ。「思ったよりも、宮永大臣の動きが早かったですね」前島が口火を切った。

  • 第五章 激震  [第76回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第76回] 

    2017年05月20日号  

    久々に赤坂の料亭「ぽん太」の離れで、鷲津は三味線を弾いていた。腐れ縁の元バンカー、飯島が囲っていた芸者の名を冠する店は、鷲津が潰れかけていた料亭を購入し、飯島にプレゼントしたものだ。現在もオーナーは飯島だが、鷲津は経営責任者として存続に力を注いでいる。

  • 第五章 激震  [第75回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第75回] 

    2017年05月13日号  

    首都電力幹部を交えて中禅寺湖ミカドホテルで始まったミーティングは、収束する気配すらなかった。中禅寺湖ミカドホテルは、濱尾会長から直々に懇請されて心身を病んだ首都電社員を受け入れている。それに伴う課題が山積していたのだ。受け入れた社員の精神状態が改善せず、逆に悪化しているケースも多く、既にホテルで静養というだけでは限界が来ていた。

  • 第五章 激震  [第74回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第74回] 

    2017年04月29日号  

    大臣室で鷲津の記者会見を、芝野は興味深く見ていた。買収すると決めているにもかかわらず、鷲津はいかにも善人面して「首都電を応援するために株を買い支えている」と断言した。記者も次々と鋭い質問をぶつけるが、鷲津は全く意に介さない。とはいえ、この段階で首都電力株を大量保有していると公表するのはさすがに不本意だったのではないだろうか。

  • 第五章 激震  [第73回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第73回] 

    2017年04月22日号  

    秀樹は、鷲津の記者会見を濱尾邸内で見ていた。買収対策本部の五〇人近いメンバーがひしめく中、前方のスクリーンに小柄な鷲津が映った。世界最強などと呼ばれる企業買収者らしからぬ容姿だな。こんな人物が、世界中の超一流企業をきりきり舞いさせたというのか。

  • 第五章 激震  [第72回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第72回] 

    2017年04月15日号  

    「只今からサムライ・キャピタル代表取締役社長、鷲津政彦による記者会見を開催致します」司会役を務める赤星の紹介で、鷲津は雛壇に上がった。一斉にストロボが焚かれた。会場を見渡すと、記者で埋め尽くされている。深々と一礼して着席したら、再びストロボの洗礼を受けた。

  • 第五章 激震  [第71回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第71回] 

    2017年04月08日号  

    一一日、Jファームを追い出されたと思ったら、そのまま本社帰還命令が出た。家族が磐前県内にいるのを理由に突っぱねたのだが、配慮するのでひとまず本社に上がってこいの一辺倒で従わざるを得なかった。言われるままに東京に向かい、その日の夜に丸の内の暁光新聞東京本社に顔を出すと、志摩が待っていた。

  • 第五章 激震  [第70回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第70回] 

    2017年04月01日号  

    湯河からの電話を終えても、芝野はすぐに鷲津に連絡を入れなかった。気後れしたからではない。鷲津が首都電力を狙っているのは、薄々気づいていた。今、この件を彼に問い質したところで、何も解決しないだろう。このところ、鷲津がまるで市場の守護神であるかのように持て囃すメディアが増えていた。巨大権力を有する大投資家や企業に立ち向かい、相応の成果を上げたことが評価されている。

  • 第五章 激震  [第69回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第69回] 

    2017年03月25日号  

    若田に教えられて住所は分かっていたが、濱尾の自宅を訪れるのは、初めてだった。高い塀に囲まれた豪邸は、個人の邸宅というより要塞のようだ。幅一〇メートルはありそうな鋼鉄製のスライド式門扉の横にあるインターフォンを押すと、すぐに女性の声で応答があった。

  • 第五章 激震  [第68回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第五章 激震 [第68回] 

    2017年03月18日号  

    秀樹はまた、あの夢を見ていた──。闇の中、轟音と共に免震重要棟が激しく上下左右に揺さぶられた。そして、いきなり屋根が吹き飛ぶ。見上げた空はオレンジ色に染まり、熱風が秀樹に襲いかかってきた。汗だくになって目覚めると、携帯電話が鳴っていた。

  • 第四章 解体か創造か  [第67回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第67回] 

    2017年03月11日号  

    鷲津は、台東区今戸の桜橋桟橋にいた。保有する屋形船にこれから乗り込んで、隅田川をゆっくりと竹芝まで下り、サムとリンと夕食を楽しむのだ。屋形船は密談や接待に重宝する。最初に手に入れたのは、一九九〇年代の終わり頃だった。船場の豪商だった祖父も、屋形船を持っていた。鷲津にも幼い頃に大阪で船遊びを楽しんだ記憶がある。

  • 第四章 解体か創造か  [第66回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第66回] 

    2017年03月04日号  

    「突然、失礼します! 首都電力の郷浦秀樹と申します! 芝野さんに質問がございます」そう叫んで立ち上がった青年の顔をよく見ようと、芝野は目を細めた。まだ、子どものような若者だ。それにしても首都電も大胆なことをする。大勢の記者の前で質問させるとは。彼が、このあと、メディアの餌食になるのも織り込み済みなんだろうか。

  • 第四章 解体か創造か  [第65回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第65回] 

    2017年02月25日号  

    昼食を終え自席に戻ると、秀樹は首都電力会長室長の丸鍋に呼ばれた。濱尾が呼んでいるらしい。記者会見で、容赦なく突き上げられたにもかかわらず、濱尾には疲労の色が見られない。会長室付となって日は浅いが、濱尾のタフさと精神力の強さには、目を見張るばかりだ。松永安左エ門とタイプは違うが、人の上に立つリーダーとしての威厳というかオーラを持つ人物として、秀樹は濱尾に尊敬の念を抱き始めていた。

  • 第四章 解体か創造か  [第64回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第64回] 

    2017年02月18日号  

    原発事故の最前線で取材をしている記者にとって北村の記事は、衝撃的だったと同時に、顰蹙ものだった。「どうやってオフサイトセンター取材の許可をもらったんですか」という質問は穏便な方だ。「あんなスタンドプレイが許されると思うのか」と怒りをぶつけてきた記者も数人いた。さらには、緩やかに形成されていたJファーム記者クラブの幹事社から「当分の間、記者クラブへの出入り禁止」を宣告された。

  • 第四章 解体か創造か  [第63回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第四章 解体か創造か [第63回] 

    2017年02月11日号  

    “そもそも我が社が潰れたら、誰が首都圏に電力を供給するんです”湯河は永田町の内閣府庁舎内のイチアイ対で、首都電力の記者会見映像を見ていた。歌川が記者に紛れて会見場で撮影してきたものだ。そしてこの濱尾の発言に強い怒りを覚えた。「何これ! どういう思考回路をしていれば、こんな傲慢な発言が出来るわけ!」佐久間とは普段からソリが合わないと感じていたが、この怒りは、湯河と同じだ。

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記者の目

  • 編集長 深澤 献

    「寝付けない」というのは本当につらい

    「寝付けない」というのはつらいものです。深夜にまで及んだ編集会議の後とか、原稿がなかなか進まず「残りは朝起きてからにしよう」と区切りをつけた後とか、床には就くものの、頭がさえて眠れないことがあります。
     そんな夜は、脳が疲れても眠れないなら体を疲れさせればいいと、真夜中でも5㌔くらいランニングしてくるというバカな解決法を取っていた時期があります。走るのが趣味とはいえ、「これはまったく健康的ではないな」と思い、最近は控えています。
     走るといえば、初マラソンの前日、遠足前の小学生のように、興奮して眠れなかったのも困りました。翌朝は早いし体力も必要なのに……。ホントに「寝付けない」というのはつらいものです。

  • 編集部 森川幹人

    草食系男子が増えているのは睡眠不足のせいだった

     睡眠特集の原稿を書く合間に読んでいた、とある脳科学者の本。なんでも、草食系男子の増加にも、睡眠が関わっているのだとか。
     太古から人類の先輩諸兄がしてきたように、日の出とともに起き、日中は獲物を追い掛け、夜は真っ暗闇の中で眠ってこそ、男らしさを育むテストステロンというホルモンが分泌されるというのです。
     ところが、現代にあっては、夜遅くまでスマホで脳を刺激し、睡眠時間は減る一方で、日中の運動も足りない。男子のテストステロン分泌量が減れば、優しいだけの草食系が増えて当然なのでしょう。
     さて、自分はどうかと振り返ってみて、取りあえず1日7時間の睡眠を目標にし、久々に筋トレでもしてみようかと決意したのでした。

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