記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』106

  • 第六章 伸るか反るか[第106回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第106回]

    2017年12月23日号  

    夜になって再び、資源エネルギー庁の長官室に、関係者が顔を揃えた。疲労困憊している生駒と湯河とは対照的に、財務省の面々はどこかさばさばとした表情だった。「国の負担が三兆円までなら、鷲津氏の要望を呑むべきだというのが我々の結論です」席に着くなり財務省大臣官房参事官の延岡が切り出した。「三兆円では、収まりませんよ」湯河は即答した。

  • 第六章 伸るか反るか[第105回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第105回]

    2017年12月16日号  

    栃木県内の宿泊施設に身を寄せている多数の被災者の状況と、今後の方針についての長時間に及ぶ会議がようやく終わった。震災が発生した直後は、困った時はお互い様という精神から、栃木県内のホテルや旅館の多くが、被災者を受け入れた。しかも、宿泊だけでなく、食事まで無料提供した。だが、震災発生から一ケ月余りが経過し、県旅館組合として、今後の方針を決める必要が出てきたのだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第104回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第104回]

    2017年12月09日号  

    第三者機関による事故調査委員会(TOAI)の委員長室で、委員の最終選考に関する書類に集中していた芝野が顔を上げると、TOAIの調査部長の加賀と技術顧問の伊予が揃って開け放したドアの前に立っている。「委員長、少しお時間を戴いてもよろしいでしょうか」

  • 第六章 伸るか反るか[第103回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第103回]

    2017年12月02日号  

    その映像は、粒子が粗く、とても見にくかった。だが、イチアイ(1I)(首都電力磐前第一原子力発電所)の一号機から四号機と同種のアーティカル1の原子炉であるのは見て取れた。それが振動している。そして、原子炉の底付近から水が漏れていた。「このタイミングで、原子炉内で核燃料の炉心の半分ほどが水面上に出たと思われる」マクギリー博士が、感情のこもらない冷たい声で説明した。

  • 第六章 伸るか反るか[第102回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第102回]

    2017年11月25日号  

    約束の時刻ちょうどに、チャイムが鳴った。会話が止み、室内が静まり返る中、湯河が鷲津を招き入れた。同行者は三人いる。「ようこそおいで下さいました」生駒が先頭を切って声をかけた。「資源エネルギー庁長官の生駒です」「お目にかかれて光栄です。サムライ・キャピタルの鷲津と申します」鷲津はおとなしく名刺交換をしている。湯河と会った時に浮かべた不敵な笑みはなく、卑屈でさえある。

  • 第六章 伸るか反るか[第101回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第101回]

    2017年11月18日号  

    資源エネルギー庁長官の生駒と共にホテルニューオータニに向かう車中で湯河は、鷲津が首都電力を電撃訪問したという報告を受けた。電話の向こうで首都電原子力本部管理部長の森上が激しく動揺している。「森上さん、落ち着いて下さい。鷲津氏は、本当に東海林先生の後ろ盾があると言ったんですか」「濱尾会長ご自身が、東海林先生と電話で直接話されたんだ。そして、東海林先生から引導を渡された」

  • 第六章 伸るか反るか[第100回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第100回]

    2017年11月11日号  

    リンの記者会見の映像を、鷲津はアカマ自動車の最高級車マーヴェルの車内で見ていた。そして、彼女が暁光新聞の北村の質問に対して啖呵を切ったのを見届けると、首都電力本社前の車寄せに車を着けるように言った。

  • 第六章 伸るか反るか[第99回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第99回]

    2017年11月04日号  

    「日本に、原発は必要だと思われますか」鷲津はそう言うと、真剣な眼差しを湯河に向けてきた。「日本が今後も先進国の一員でいたいならば、原発は必須です」「しかし、国民は恐怖に戦いていますよ。政府と首都電に騙されたとする発言が、インテリ層の間でも広がっています。それを払拭する手だてはあるのですか」

  • 第六章 伸るか反るか[第98回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第98回]

    2017年10月28日号  

    芝野は、内閣府の第三者機関による事故調査委員会(TOAI)委員長室で、資料読みに追われていた。TOAIの初会議が明日に迫っていたからだ。資料に没頭していたら、事務局次長の歌川が「芝野さん、これを」と言ってノートパソコンの画面を見せた。暁光新聞のスクープだった。鷲津が首都電力株の過半数を取得し、「日本のためにひと肌脱ぐ」とある。

  • 第六章 伸るか反るか[第97回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第97回]

    2017年10月21日号  

    「任意同行なら断る。村上さん、それで突っぱねてくれ」サムが強い口調で命令したが、村上は動かなかった。「サムの指示に従ってくれ」鷲津がそう言うと、村上は覚悟を決めたように唇を強く結んで部屋を出た。「サム、さっき財務省の仕業だと言ったが、俺には濱尾の悪あがきに思えるが」「それも可能性の一つだな。いずれにしても、今すぐホテルを脱出しよう」

  • 第六章 伸るか反るか[第96回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第96回]

    2017年10月14日号  

    鷲津は首都電力の経営権を奪取できるだけの株数を取得していた。それで、俺は呼ばれたわけか。ある程度予想していたことではあるが、北村は腹をくくった。「凄いな。どうすれば、首都電力なんていう巨大企業を買えるんです」「簡単です。証券会社に、金に糸目は付けないから買い漁れ! と叫ぶだけですよ」「首都電株を一三%保有したと記者会見されたのが、四月一二日ですよ。あれから僅か一週間足らずで三七%余りを買い集められたわけでしょ。凄まじい勢いだ」鷲津は肩をすくめただけだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第95回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第95回]

    2017年10月07日号  

    午前三時半から始まった首都電力の門脇社長の緊急記者会見は、僅か一〇分で終了した。既に配達に回った暁光新聞朝刊一面に掲載された濱尾会長への独占インタビューの内容を、「事実無根」と断じるためだけの会見だった。未明にライバル社にとんでもないスクープ記事を飛ばされて怒り心頭の記者たちが門脇に詰め寄った。だが、当初から記者のリアクションを予想していた首都電は、警備員と社員がスクラムを組んで門脇を守った。

  • 第六章 伸るか反るか[第94回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第94回]

    2017年09月30日号  

    遅い夕食を摂っていると、鷲津の携帯電話が振動した。ディスプレイには“暁光新聞 北村”とある。会食相手に断って、個室の外で応答した。「濱尾会長は、奥羽、名古屋と首都電力を統合する話を進めています。ご存じでしたか」ふざけたデマを。「初めて聞きますね」電話の向こうで北村が、鷲津の言葉の真偽を測っている。「大株主としてのご意見を伺いたいのですが」「ナンセンスでしょう。というより、もし私が奥羽や名古屋電力の株主だったら、統合を進める経営陣に対して、株主代表訴訟を起こします」

  • 第六章 伸るか反るか[第93回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第93回]

    2017年09月23日号  

    首都圏電気事業会社経営危機対策審議室(首電対)の会議の後、湯河は、何人かの首都電力経営陣と会った。同社が求めている再生スキームについてヒアリングしてこいという生駒の命だ。首都電の意思は明確だった。事故に関連して発生する損害賠償については、可能な限り国家負担とし、政府は再生に向けて公的資金を投入し、首都電を徹底支援する──。その傲岸不遜さには呆れ返ったが、今日は喧嘩をふっかける日ではないと自重した。

  • 第六章 伸るか反るか[第92回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第92回]

    2017年09月16日号  

    北村は、首都電力会長室長に電話を入れた。慇懃な口調の男が応答し、「本日の午後五時で如何でしょうか」と、挨拶もそこそこに切り出した。財界総理として多忙を極めると言われている濱尾が、連絡した数時間後に会うなんてどういうことだ。それほど急いで話したいことがあるのだろうか。「午後四時に、御社に迎えの車を遣ります。それにご乗車下さい」「カメラマンが同行してもよろしいでしょうか」「北村様、お一人でお願い致します」交渉の余地なしだと相手に悟らせる口調の強さだった。

  • 第六章 伸るか反るか  [第91回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか [第91回] 

    2017年09月09日号  

    チェックアウトを済ませた時、秀樹の携帯電話が鳴った。首都電力広報室第三課の稲葉課長からだ。「YouTubeに、あなたと萩本さんが、磐前市民と小競り合いをしている映像がアップされているんだけど、どういうこと?」「見ていないので、分かりません」「それに、午前中に予定していたサッカー教室に、萩本さんが来なかったと抗議も来ている」 なんてこった。秀樹は仕方なく丁寧に説明した。

  • 第六章 伸るか反るか  [第90回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか [第90回] 

    2017年09月02日号  

    「少し休憩しませんか」この中で誰よりも休息を嫌いそうな延岡が言った。会議が始まって約一時間半、関係省庁の主張が出揃い、停滞気味だったので湯河も応じた。坂木と絹田、生駒はさっさと部屋を出てしまった。「湯河さん、ちょっといいですか」湯河の返事を待たずに延岡は出入口に向かった。廊下に出ると、会話が聞こえない程度の距離を置いて三人が電話している。湯河は、廊下を歩く延岡に続いた。財務省の参事官は、自販機で缶コーヒーを二本買うと、廊下の突き当たりの扉を開いて非常階段に出た。

  • 第六章 伸るか反るか  [第89回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか [第89回] 

    2017年08月26日号  

    首都電力の国有化を審議する「首都圏電気事業会社経営危機対策審議室(首電対)」は、メディアの目を避けるために、内閣府内に設けられた。湯河は、宮永大臣の強い希望もあって、イチアイ対室長との兼務で室長に着任した。指揮を執るのは、資源エネルギー庁長官の生駒で、この日も関係省庁から集められたメンバーとの顔合わせに同席した。

  • 第六章 伸るか反るか  [第88回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか [第88回] 

    2017年08月12日号  

    秀樹はドアミラーで、後を追いかけてくる車輌がないのを確認してからドライバーに誰何した。差し出された名刺には「NPO法人 サムライ・ジャパン・エイド(SJA) 代表理事 アンソニー・ケネディ」とあった。「磐前県に特化して、被災者にきめ細かい支援活動を続けて下さっている団体ですか」組織の存在だけでなく、活動内容やケネディへのインタビューも、新聞記事で読んだのを思い出した。

  • 第六章 伸るか反るか  [第87回] 

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか [第87回] 

    2017年08月05日号  

    窓から差し込む朝日があまりに眩しくて、秀樹はベッドから飛び起きた。寝坊してしまった! あかねとの朝のランニング時刻まで、あと一八分しかない。昨晩、同期と盛り上がって久しぶりに深酒をしたせいだ。案の定二日酔いで、立ち上がると激しい頭痛が襲ってくる。即行でシャワーを浴びてロビーに向かった。ロビーフロアに下りると入念にストレッチをするあかねの影が見えた。

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記者の目

  • 編集部 重石岳史

    この重税感…でも英国よりはましだった

     給与明細を見ると、「こんなに税金を取られているのか」といつもがくぜんとします。所得税や消費税が増税されれば家計の負担はさらに増すことになり、やり場のない怒りを抱く人も多いのではないでしょうか。
     もちろん納税は、公共サービスに欠かせない国民の義務です。ただし日本人だけが重い税金を支払わされていないか。気になったので各国の税事情を調べてみました。
     国税庁によれば、所得税と住民税の負担水準は、日本では年収700万円の場合に39・2万円。米国は37・3万円とほぼ変わりませんが、英国はなんと135・3万円だそうです。この比較を見てどう感じるかはその人次第ですが、観念して払い続けようと私は思いました。

  • 編集長 深澤 献

    ロボットの“扶養控除対象親族”として暮らしたい

     AIやロボットが人間の仕事を奪うという話題があります。でも、もし完全に自分と同じだけの仕事をこなすロボットが実現したなら、私はそれを買って代わりに出社させ、給料を稼いできてもらうでしょう。そして私は、所得税納税者たるロボットの“扶養控除対象親族”としてのんびり暮らすのです。
     問題は、そのロボットの値段。あまりに高いと、そいつがいくら稼いできてもローンで消えていきそうです。逆に安いと、会社から「同じロボットを買ったから、もう来なくていいよ」と言われそう。
     人間に代わるロボットを導入する企業に「ロボット税」を課し、失職した人々に再分配すべきといった議論が海外では始まっていますが、その行方に興味津々です。

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