記事一覧:連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』111

  • エピローグ [最終回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    エピローグ [最終回]

    2018年02月10日号  

    「恐れ入りますが、メディア関係の方は、お引き取り下さい。お客様のご迷惑になります」我慢できなくなった貴子は、日光ミカドホテルの正門前を塞ぐメディア関係者に向かって訴えた。「一部の報道関係者には、裏庭の焼却炉を見せたそうじゃないですか。なのに我々を追い払うのは、不公平では?」派手なスーツの女性リポーターは、一歩も引くつもりはないらしい。別に見せたわけではない。宿泊していた一人の記者が、勝手に裏庭に入り込んだのだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第110回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第110回]

    2018年02月03日号  

    会議室では、宮永一人が待っていた。古谷総理はもちろん、宮永の秘書の姿もない。「この度は、無茶を申し上げました。ご配慮を感謝します」鷲津は、宮永に頭を下げた。「私も謝らなければならないんだ。総理の都合がどうしてもつかず、私が代理で話を聞くことになった」俺も見くびられたものだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第109回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第109回]

    2018年01月27日号  

    北村がマンダリン・オリエンタル東京のエントランスに入るなり、鷲津の女性秘書が声をかけてきた。「ご足労をおかけして、恐れ入ります」上品な黒のスーツを着こなし髪にも乱れ一つない秘書は、軽やかな足取りで先導した。案内されたのは広い宴会場で、部屋の片隅にあるピアノの前に、鷲津一人が待っていた。

  • 第六章 伸るか反るか[第108回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第108回]

    2018年01月20日号  

    早版の締め切りが過ぎても、鷲津の首都電力に対する買収提案の具体的な内容は判明しなかった。さらに、財務省や資源エネルギー庁の幹部による首都電国有化問題の対策会議も続いているはずなのだが、どこからも情報は漏れてこない。

  • 第六章 伸るか反るか[第107回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第107回]

    2018年01月13日号  

    鷲津はマンダリン・オリエンタル東京の部屋にいた。ここに車で戻る途中、首都電力原子力本部管理部長の森上からの電話で、首都電役員たちの慌てふためきぶりを聞いた。森上によると、首都電はパニックに陥っているらしい。それ以上に、現社長の門脇以下、大半の役員が濱尾の会長解任もやむなしと考えているという情報を得たのが大きい。門脇は、鷲津が本格的に経営に乗り出した段階で辞任するようだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第106回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第106回]

    2017年12月23日号  

    夜になって再び、資源エネルギー庁の長官室に、関係者が顔を揃えた。疲労困憊している生駒と湯河とは対照的に、財務省の面々はどこかさばさばとした表情だった。「国の負担が三兆円までなら、鷲津氏の要望を呑むべきだというのが我々の結論です」席に着くなり財務省大臣官房参事官の延岡が切り出した。「三兆円では、収まりませんよ」湯河は即答した。

  • 第六章 伸るか反るか[第105回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第105回]

    2017年12月16日号  

    栃木県内の宿泊施設に身を寄せている多数の被災者の状況と、今後の方針についての長時間に及ぶ会議がようやく終わった。震災が発生した直後は、困った時はお互い様という精神から、栃木県内のホテルや旅館の多くが、被災者を受け入れた。しかも、宿泊だけでなく、食事まで無料提供した。だが、震災発生から一ケ月余りが経過し、県旅館組合として、今後の方針を決める必要が出てきたのだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第104回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第104回]

    2017年12月09日号  

    第三者機関による事故調査委員会(TOAI)の委員長室で、委員の最終選考に関する書類に集中していた芝野が顔を上げると、TOAIの調査部長の加賀と技術顧問の伊予が揃って開け放したドアの前に立っている。「委員長、少しお時間を戴いてもよろしいでしょうか」

  • 第六章 伸るか反るか[第103回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第103回]

    2017年12月02日号  

    その映像は、粒子が粗く、とても見にくかった。だが、イチアイ(1I)(首都電力磐前第一原子力発電所)の一号機から四号機と同種のアーティカル1の原子炉であるのは見て取れた。それが振動している。そして、原子炉の底付近から水が漏れていた。「このタイミングで、原子炉内で核燃料の炉心の半分ほどが水面上に出たと思われる」マクギリー博士が、感情のこもらない冷たい声で説明した。

  • 第六章 伸るか反るか[第102回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第102回]

    2017年11月25日号  

    約束の時刻ちょうどに、チャイムが鳴った。会話が止み、室内が静まり返る中、湯河が鷲津を招き入れた。同行者は三人いる。「ようこそおいで下さいました」生駒が先頭を切って声をかけた。「資源エネルギー庁長官の生駒です」「お目にかかれて光栄です。サムライ・キャピタルの鷲津と申します」鷲津はおとなしく名刺交換をしている。湯河と会った時に浮かべた不敵な笑みはなく、卑屈でさえある。

  • 第六章 伸るか反るか[第101回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第101回]

    2017年11月18日号  

    資源エネルギー庁長官の生駒と共にホテルニューオータニに向かう車中で湯河は、鷲津が首都電力を電撃訪問したという報告を受けた。電話の向こうで首都電原子力本部管理部長の森上が激しく動揺している。「森上さん、落ち着いて下さい。鷲津氏は、本当に東海林先生の後ろ盾があると言ったんですか」「濱尾会長ご自身が、東海林先生と電話で直接話されたんだ。そして、東海林先生から引導を渡された」

  • 第六章 伸るか反るか[第100回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第100回]

    2017年11月11日号  

    リンの記者会見の映像を、鷲津はアカマ自動車の最高級車マーヴェルの車内で見ていた。そして、彼女が暁光新聞の北村の質問に対して啖呵を切ったのを見届けると、首都電力本社前の車寄せに車を着けるように言った。

  • 第六章 伸るか反るか[第99回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第99回]

    2017年11月04日号  

    「日本に、原発は必要だと思われますか」鷲津はそう言うと、真剣な眼差しを湯河に向けてきた。「日本が今後も先進国の一員でいたいならば、原発は必須です」「しかし、国民は恐怖に戦いていますよ。政府と首都電に騙されたとする発言が、インテリ層の間でも広がっています。それを払拭する手だてはあるのですか」

  • 第六章 伸るか反るか[第98回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第98回]

    2017年10月28日号  

    芝野は、内閣府の第三者機関による事故調査委員会(TOAI)委員長室で、資料読みに追われていた。TOAIの初会議が明日に迫っていたからだ。資料に没頭していたら、事務局次長の歌川が「芝野さん、これを」と言ってノートパソコンの画面を見せた。暁光新聞のスクープだった。鷲津が首都電力株の過半数を取得し、「日本のためにひと肌脱ぐ」とある。

  • 第六章 伸るか反るか[第97回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第97回]

    2017年10月21日号  

    「任意同行なら断る。村上さん、それで突っぱねてくれ」サムが強い口調で命令したが、村上は動かなかった。「サムの指示に従ってくれ」鷲津がそう言うと、村上は覚悟を決めたように唇を強く結んで部屋を出た。「サム、さっき財務省の仕業だと言ったが、俺には濱尾の悪あがきに思えるが」「それも可能性の一つだな。いずれにしても、今すぐホテルを脱出しよう」

  • 第六章 伸るか反るか[第96回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第96回]

    2017年10月14日号  

    鷲津は首都電力の経営権を奪取できるだけの株数を取得していた。それで、俺は呼ばれたわけか。ある程度予想していたことではあるが、北村は腹をくくった。「凄いな。どうすれば、首都電力なんていう巨大企業を買えるんです」「簡単です。証券会社に、金に糸目は付けないから買い漁れ! と叫ぶだけですよ」「首都電株を一三%保有したと記者会見されたのが、四月一二日ですよ。あれから僅か一週間足らずで三七%余りを買い集められたわけでしょ。凄まじい勢いだ」鷲津は肩をすくめただけだ。

  • 第六章 伸るか反るか[第95回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第95回]

    2017年10月07日号  

    午前三時半から始まった首都電力の門脇社長の緊急記者会見は、僅か一〇分で終了した。既に配達に回った暁光新聞朝刊一面に掲載された濱尾会長への独占インタビューの内容を、「事実無根」と断じるためだけの会見だった。未明にライバル社にとんでもないスクープ記事を飛ばされて怒り心頭の記者たちが門脇に詰め寄った。だが、当初から記者のリアクションを予想していた首都電は、警備員と社員がスクラムを組んで門脇を守った。

  • 第六章 伸るか反るか[第94回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第94回]

    2017年09月30日号  

    遅い夕食を摂っていると、鷲津の携帯電話が振動した。ディスプレイには“暁光新聞 北村”とある。会食相手に断って、個室の外で応答した。「濱尾会長は、奥羽、名古屋と首都電力を統合する話を進めています。ご存じでしたか」ふざけたデマを。「初めて聞きますね」電話の向こうで北村が、鷲津の言葉の真偽を測っている。「大株主としてのご意見を伺いたいのですが」「ナンセンスでしょう。というより、もし私が奥羽や名古屋電力の株主だったら、統合を進める経営陣に対して、株主代表訴訟を起こします」

  • 第六章 伸るか反るか[第93回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第93回]

    2017年09月23日号  

    首都圏電気事業会社経営危機対策審議室(首電対)の会議の後、湯河は、何人かの首都電力経営陣と会った。同社が求めている再生スキームについてヒアリングしてこいという生駒の命だ。首都電の意思は明確だった。事故に関連して発生する損害賠償については、可能な限り国家負担とし、政府は再生に向けて公的資金を投入し、首都電を徹底支援する──。その傲岸不遜さには呆れ返ったが、今日は喧嘩をふっかける日ではないと自重した。

  • 第六章 伸るか反るか[第92回]

    連載小説 ハゲタカ5 『シンドローム』
    第六章 伸るか反るか[第92回]

    2017年09月16日号  

    北村は、首都電力会長室長に電話を入れた。慇懃な口調の男が応答し、「本日の午後五時で如何でしょうか」と、挨拶もそこそこに切り出した。財界総理として多忙を極めると言われている濱尾が、連絡した数時間後に会うなんてどういうことだ。それほど急いで話したいことがあるのだろうか。「午後四時に、御社に迎えの車を遣ります。それにご乗車下さい」「カメラマンが同行してもよろしいでしょうか」「北村様、お一人でお願い致します」交渉の余地なしだと相手に悟らせる口調の強さだった。

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記者の目

  • 編集部 柳澤里佳

    ヤマト現場取材で感じたギャップ

     宅配危機という言葉が定着してはや1年。ヤマトにトップインタビューを申し込みましたが、断られたので、現場の前線にいる関係者を徹底取材しました。
     そこから見えてきたのは、カリスマ経営者が築いた優良企業のイメージと、実態とのギャップです。ドライバーが相次いで労基署に駆け込んでいるのは、毎日大量の荷物と格闘する一方、成功体験に縛られ、変わることのできない経営陣に戦いを挑むためではないかと感じました。
     思い起こせば学生時代、“物流系”のアルバイトを二つしていました。一つは宅配ピザ店、もう一つは東京湾岸にある巨大倉庫のピッキング作業です。物流業の過酷さを、ほんの少し垣間見たような気がします。

  • 編集長 深澤 献

    運ぶ人への想いが薄れた宅配便

    「20世紀の宅配便は『送る人』と『受け取る人』の“想い”を繋ぐものであり、金銭的かつ感情的価値のあるモノが運ばれていた」
     元流通業界の証券アナリストで経営コンサルタントの松岡真宏氏が、ダイヤモンド・オンラインに寄せた記事の中で指摘しています。確かに学生時代、実家からの食料(時々は現金も)の詰まった小包はうれしかったものです。
     ところが21世紀、Eコマースの普及で様相が変わりました。販売業者から直接届くBtoCだけでなく、フリマアプリを通じた見知らぬ者同士のCtoCまで、宅配業者をフル活用する生活です。荷物から「送る人」と「受け取る人」の想いが失われ、同時に「運ぶ人」への想いも薄れたのかもしれません。

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