記事一覧:Book Reviews 知を磨く読書280

  • 最悪情勢分析が予測する近未来

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    最悪情勢分析が予測する近未来

    2014年12月13日号  

    評論家の副島隆彦氏の近未来情勢分析は実に興味深い。2008年春に同年9月のリーマンショックを「リーマン・ブラザーズがつぶれる」と社名を出して予測した。インテリジェンスの世界で行われる「最悪情勢分析」について長けているから、副島氏には正確な予測ができたのである。新著『官製相場の暴落が始まる』で、副島氏は、〈実需や実体のない会社が、人類(人間)のフワフワした夢や願望だけで、アニメ、オタク、ゲーム、マンガの空騒ぎ(ユーフォリア。熱病)だけでいつまでも保つわけがない。/それよりは、私たちにとって身近に大切であり、必需品であるエネルギーの問題を真剣に考えるべきだ〉と主張する。評者も全面的に賛成する。

  • 危機的様相を呈する資本主義

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    危機的様相を呈する資本主義

    2014年12月06日号  

    世界的規模で、資本主義は危機的様相を呈している。新聞を読んでいると、米国ではオバマケアで、少し医療福祉が充実したという印象を受ける。しかし、堤未果氏の『沈みゆく大国アメリカ』を読むとオバマケアも超・富裕層が得をする仕組みだ。オレゴン州にはオバマケアの発想に立ち「できるだけ多くの州民に医療保険を」と考える民主党議員を中心に独自の医療制度「オレゴンヘルスプラン(OHP)」が設立されている。OHPは再発がん患者にどのような対応をしているのだろうか。

  • 感染症パニックとの対峙法

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    感染症パニックとの対峙法

    2014年11月29日号  

    「エボラ出血熱」の流行が世界的に大きな問題になっている。感染症専門医の岩田健太郎氏は、『「感染症パニック」を防げ!』で、〈パニックは、クールで理性的な対応を難しくし、人々はよけいな苦労に苦しんだのです。その苦労は、感染症の実被害以上の苦しみを人々に与えました。/2001年の「バイオテロ」の被害者は22名、死亡者はそのうち5名でした。あれだけ全米、いや、世界中が恐怖した問題の被害としては、極めて少ない被害者数と言えないでしょうか。/こうした体験から私は学習しました。感染症のリスクを扱うときは、単に患者を診察し、病原体を見つけ、その病原体を殺して治療する以上の何かが必要であると。感染症の実被害以上に問題となる「パニック」と対峙することが大事であると。〉と強調する。岩田氏の指摘の通りと思う。行政機関、医療関係者がリスク・コミュニケーション能力を高めることが重要だ。

  • 嫌韓嫌中本が売れる訳

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    嫌韓嫌中本が売れる訳

    2014年11月22日号  

    表現、言論の自由が保障された欧米、日本などでは、ヘイトスピーチ、排外主義本などに対する規制の是非、また規制が行われる場合、その線引きをどこにするかが深刻な問題になる。『NOヘイト!』は、編集者、書店員など出版の現場でこの問題を憂慮する人々の見解をまとめている。社会科学書を担当する書店員が、嫌韓嫌中本について〈危惧を覚えるほど売れています。(正直なところ、もっと前面に、臆面なく展開すれば倍以上売れるのでしょうが)日本はとにかく素晴らしくて、世界から過去・現在において褒められる。犯罪が増えたり経済がうまくゆかなくなったり、今までの日本と違ってしまったり、沢山イチャモンをつけられるのは、他国が悪い、日本の中に入り込んでいる在日外国人が悪いんだ、という図式はとても簡略で甘美であるとすら思えます。人のせいにできるのですから。一番楽な思考停止状態になれるBOXを求めた結果なのかと思っています〉と指摘する。現下の日本が抱えている病理を端的に示している。

  • 好戦的な主張があふれる理由

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    好戦的な主張があふれる理由

    2014年11月15日号  

    東京外国語大学大学院の伊勢崎賢治教授は、国連幹部として東ティモール、シエラレオネの、日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を指揮した経験を持つ、理論と実践の双方に通じた安全保障専門家だ。同教授の『日本人は人を殺しに行くのか』は、集団的自衛権の行使が日本国家と日本国民にとってほんとうに必要であるかについて丁寧に論じている。

  • きな臭い国際情勢の背景

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    きな臭い国際情勢の背景

    2014年11月08日号  

    シリア、イラクにおけるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の台頭による内戦、ウクライナ東部における政府軍と親露派武装勢力の抗争など、国際情勢がきな臭くなっている。中野剛志氏は、『世界を戦争に導くグローバリズム』において、〈新たな国際秩序の形成の過程で起きるのは、世界の各地域における地域覇権を巡る闘争であり、「勢力圏」の境界線で起きる衝突である。(中略)東アジアにおいては、中国が日本や東南アジア諸国との国境を巡る紛争を激化させている。中東では、サウジアラビアを盟主とするスンニ派と、イランが率いるシーア派の覇権闘争が続いている。ロシアは、クリミアを奪取し、さらにカザフスタンやベラルーシとの経済同盟を構築して、中央アジアの覇権国家たらんとしている〉と指摘する。

  • 人間の闇に深く切り込む

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    人間の闇に深く切り込む

    2014年11月01日号  

    早見和真氏の『イノセント・デイズ』は、サスペンス小説として抜群に面白い。同時に人間存在の闇に深く切り込んでいる。田中幸乃は、確定死刑囚だ。元恋人・井上敬介への未練を断ち切ることができない。介護付き老人ホームで敬介が夜勤しているときに、敬介のアパートが放火され、妻と1歳の双子の姉妹が焼死した。自宅で大量の睡眠薬を飲んで自殺を図った幸乃が警察の調べに対して殺意を認めたので、逮捕、起訴される。

  • 日韓関係の優れた構造分析

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    日韓関係の優れた構造分析

    2014年10月25日号  

    外交評論家で元外交官の宮家邦彦氏が『哀しき半島国家 韓国の結末』において、日本と韓国の関係についての優れた構造分析を行っている。本書のオリジナリティは、コリア半島(韓国・北朝鮮)と中国の間にあるマンジュ地方(旧満州国に相当する地域)を「中華でもコリアでもない地域」として重要な変数に組み入れていることだ。

  • 「イスラーム国」は弱くない

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    「イスラーム国」は弱くない

    2014年10月18日号  

    9月22日、米軍がシリア領内に所在するイスラーム教スンニー派原理主義過激派「イスラーム国」の拠点を空爆した。米国の軍事行動にサウディアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、ヨルダン、バハレーンが有志連合として加わった。

  • 猫を通して見える人間社会

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    猫を通して見える人間社会

    2014年10月11日号  

    犬と違って猫は人間にこびない。群れずに自由に活動する。そういう猫の神秘的な行動を動物行動学者の山根明弘氏が『ねこの秘密』で分かりやすく解明している。猫も人間も哺乳類ということでは同類だが、雄猫は、子育てを一切手伝わない。だから、雄猫の目的は、少しでも多くの子孫を残すことになる。雌猫は、出産と子育てに大きなエネルギーを割かなくてはならないので、どの雄猫の子をはらむのか、質を重視する。結局、自分の遺伝子をどう残していくかという基準で猫が行動していることがよく分かる。

  • 全共闘世代の核心に迫る

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    全共闘世代の核心に迫る

    2014年10月04日号  

    長らく品切れになっていた全共闘世代のバイブルであった高橋和巳氏の『邪宗門』(単行本初版1966年)が河出文庫から復刊された(解説は評者が書いた)。戦前、急速に力を付けた新宗教「ひのもと救霊会」は、国家権力に接近したが故に、国家から警戒され徹底した弾圧を受ける。その教団が、戦後、米占領軍に対して蜂起し、全滅するという破滅型の小説だ。

  • 極端な利潤追求は損をする

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    極端な利潤追求は損をする

    2014年09月27日号  

    社会は、人間と人間によって形成されている。企業が極端な利潤追求に走ると、社会からの搾取を強め、結果として信頼を落とし、損をする。カリスマ経営学者のリンダ・グラットン氏は『未来企業』で、〈企業がどれだけの関心を持って近隣とのつながりをどこまで強めようとしているかは、物理的なオフィスの設計に表れるだけでなく、従業員による地元への支援の仕方にも表れる〉と強調する。そして具体例として、ヤクルトを紹介する。

  • 最も効率的な読書中心の勉強法

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    最も効率的な読書中心の勉強法

    2014年09月20日号  

    勉強法のこつは、勉強の仕方が上手で、かつ実績を挙げている人の技法をまねることだ。東京大学法学部を首席で卒業し、財務省に2年勤務した後、現在は弁護士として活躍する山口真由氏の勉強法は参考になる点が多い。山口氏は読書を中心にして知識を身に付けることが効率的と考えている。その理由について『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』でこう説明する。

  • 民主党“失敗の本質”は独善主義

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    民主党“失敗の本質”は独善主義

    2014年09月13日号  

    多くの日本人が政治に対する関心を失っている。2009年の自民党から民主党への政権交代への期待が大き過ぎたことに対する反動と思う。民主党政権の功罪についてきちんと総括しておかないと、民主主義の基盤そのものが溶解してしまう危険がある。山口二郎・法政大学教授は『民主党政権とは何だったのか』で、〈自民党と比べて、民主党の政治家は秀才タイプが多いですね。官僚を批判しながらも、ある意味で官僚と似た発想をしてしまう。ベスト・アンド・ブライテストとして政策を作れば、他の人も理解してくれるし、実現して当然というような、ある意味で自己中心的な発想が民主党政権にはあったと思いますね。いろんな人がいろいろな利害関係を持っていて、それをさばくのが政治に他ならないという考えがあまりなかった〉と言う。的確な指摘と思う。

  • 誤解は多様性を確保する必要悪

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    誤解は多様性を確保する必要悪

    2014年09月06日号  

    仕事においても、生活においても、さまざまなストレスがある。そのほとんどが人間関係から生じる。特に誤解によってトラブルが生じることが多い。渋滞学の専門家である東京大学の西成活裕教授は、『誤解学』で〈誤解とは、単一化を避け多様性を確保する人間社会のメカニズムであり、必要悪とも言えるものであろう〉と指摘する。生物の進化の歴史を学ぶと、単一性は死滅をもたらす。誤解によって文化の多様性が確保されているので、人類は生き残ることができるのだ。

  • 存在感を強める未承認国家

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    存在感を強める未承認国家

    2014年08月30日号  

    国際情勢がきな臭くなっている。ウクライナ、イラク、パレスチナなどでの紛争は、実質的な戦争に拡大しつつある。その中で大きな意味を持つのが、主権国家として宣言しても、国際社会から認められない未承認国家だ。パレスチナやウクライナ東部のドネツク人民共和国、ハリコフ人民共和国などの未承認国家と国境を越えるテロ組織アルカイダ、イラクとシリアの一部地域を実効支配するが主権国家としての宣言をしない「イスラーム国」のような武装集団が国際社会の不安定要因になっている。

  • 陳腐化が早い“すぐ役立つ学問”

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    陳腐化が早い“すぐ役立つ学問”

    2014年08月23日号  

    幅広く正確な教養の伝授法について、池上彰氏の右に出る人はいない。『おとなの教養』で池上氏は、〈日本ではよく大学に対して、社会に出てすぐ役に立つ学問を教えてほしいと言われます。ところがアメリカは意外とそんなことがないのです。すぐに役に立つものを教えるのは専門学校で、いわゆるエリート大学は、「すぐに役に立たなくてもいいこと」を教えるのです。/すぐに役に立つことは、世の中に出て、すぐ役に立たなくなる。すぐには役に立たないことが、実は長い目で見ると、役に立つ。こういう考え方なのです〉と強調する。評者も同じ意見だ。

  • 反知性主義を克服する方法

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    反知性主義を克服する方法

    2014年08月09日号  

    最近、日本人と日本社会が劣化していると危機感を抱く人が増えている。政治学者の白井聡氏は、『日本劣化論』で反知性主義が劣化を端的に示す現象と考えこう述べる。〈もともと反知性主義に対抗するのが啓蒙主義とか教養主義だったんですが、それはすでに失効してしまっています。それらが崩壊したからこそ、反知性主義が跋扈してきている。(中略)反知性主義者に届く言葉はそもそもあるのか疑問です。というのは、反知性主義というのは、知性が不在だということではなくて、知性への憎悪ですから〉

  • 世界を破滅に陥れる言葉の魔力

    Book Reviews 知を磨く読書
    世界を破滅に陥れる言葉の魔力

    2014年08月02日号  

    人間の特徴は、言葉を理解することだ。もっとも言葉には魔力がある。言葉の力を悪用することで、世界を破滅に陥れることもできる。アドルフ・ヒトラーがその例だ。政界登場からドイツ敗戦までのヒトラーの150万語の演説データを分析した『ヒトラー演説』で高田博行氏はこう指摘する。

  • 「集団的自衛権」確立の趣意

    Book Reviews 知を磨く読書
    「集団的自衛権」確立の趣意

    2014年07月26日号  

    7月1日、安倍政権は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定を行った。もっとも集団的自衛権の行使については、連立与党の公明党が反対していた。そのため閣議決定の内容自体は、個別的自衛権を若干拡大した程度の内容になっている。この内容なら、内閣法制局と外務省の頭の良い官僚は、個別的自衛権と警察権で、完璧な理屈を組み立てることができたと思う。

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記者の目

  • 編集部 鈴木洋子

    寿命が半年縮んだ

    昨年の今頃、受診した人間ドックから「肝臓に大きな影がある。早急に精密検査をして」とものすごい勢いで電話がありました。大学病院で「肝臓がん疑い」と電子カルテに入力され、それから精密検査の日まで夜も眠れず食事の味もしませんでした。幸い結果は「いかにもがんに見える良性結節」。診察室で腰が抜けましたが、検査の日までの2週間でたぶん寿命も半年縮みました。 「がんかもしれない」と言われて中ぶらりんにされるストレスたるや。検査や健診は行けば行くだけいいといったイメージがありますが、いろいろなデメリットはもっと認識されるべきですよね。そういえば健診特集の締め切りで忙しく今年度はまだ人間ドック行けてません。

  • 編集長 山口圭介

    業績悪化の本格化はこれから

    「住宅バブル崩壊」が2008年の世界金融危機のきっかけとなりました。今また金融危機の懸念が強まっていますが、その引き金があるとすれば「社債バブル崩壊」でしょう。  超低金利の長期化に苦しむ投資家は、リスク度外視で高い利回りを求めて低格付け社債を〝爆買い〟してきました。世界の社債発行残高は1400兆円に膨張、うち半分は低格付け社債です。コロナショックで投資家がリスク回避姿勢を強め、米社債市場から資金が大量流出しています。  米FRBは「社債市場の国有化」(市場関係者)とも言える新枠組みなど、なりふり構わず大型支援策を打ち出しましたが、業績悪化の本格化はこれから。さらなる資金流出が避けられません。

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