トップ10には外資系が6社!
〝肉食外資系〟と〝草食外資系〟の正体

 ランキング上位で特徴的だったのは、まずは何よりも外資系の多さだ。トップ10のうち実に6社を外資系が占めた。

 そしてもう一つ、冒頭の発言にもつながる〝昭和的〟な古きよき日本企業の評価の高さだ。

 下の表は、ランキングの範囲をトップ100まで広げて特徴別にカテゴライズしたものだが、そうした伝統的な日本企業の名前も挙がっている。典型は7位にランクインしたコマツだろう。

 同社関係者は「うちはBtoBの地味な企業なので、就職人気ランキングでは上位に入ることはなかったのに」とトップ10入りを驚く。ただ、口コミでは「人をすごく大事にする。特に若手を教育して早く一人前にしようという気がすごく感じられる」(開発本部、在籍3年未満、新卒入社の男性)と前向きなコメントが目立った。

 売り上げの8割が海外というグローバル企業でもあり、こうした地味ながら地に足の着いた企業に目を向けることも会社選びでは必要だろう。

 一方、上位を席巻した外資系は大きく二つのタイプに分けられる。一つはゴールドマン・サックス証券やマッキンゼーなど、世界的な知名度があり、超高給だが、競争が激しい「肉食外資系」。終身雇用とは無縁の会社だ。

 もう一つが「草食外資系」。一般的な外資系のイメージを覆すのんびりした社風が特徴だ。代表例は11位の日本ベーリンガーインゲルハイム。「外資なのに内資な社風がする」(営業、在籍5〜10年、新卒入社の女性)といったコメントがあるかと思えば、「ゆったりしていてもの足りなさを感じた」(MR、在籍3年未満、新卒入社の女性)と、外資系とは思えない理由で退職した社員もいるほどだ。

「思いのほかアットホーム」(半導体計測、在籍15〜20年、新卒入社の男性)のアジレント・テクノロジー・インターナショナルや「リストラゼロの経営方針」(管理、在籍3〜5年、中途入社の男性)の日本ナショナルインスツルメンツも草食外資系に該当する。

 本誌では年収1000万円以上のエリートビジネスマンが学生にお薦めする企業ランキング上位20社もあわせて紹介しているが、いずれの企業も時価総額が高い、つまり市場で評価されている企業といえる。もちろん、それも会社選びの大事な基準だろうが、今回の口コミに基づいた本当にいい会社ランキングは、そうした見方とは異なる内側目線で企業を評価している。

 また、就職活動をしている学生としては、落ち着いてじっくり成長できる会社の方がありがたい──。そこで本誌には社員を長期的な目線でじっくり育てる「人材の長期育成」ランキングも掲載した。上位に並ぶのは、〝人に優しい〟日系企業だ。

 例えば、ランキング4位に入った出光興産の創業者で、ベストセラー小説『海賊と呼ばれた男』のモデルとなった出光佐三は、終戦直後の多くの企業がリストラをしていた時期に「1000人の社員全員をクビにしない」と宣言した。「社員を大事に育てる文化は今も息づいている」と星野完人事課長は言う。

「本当にいい会社」ランキングで上位の多くを占めた、外資系企業やベンチャー系企業は、やる気と実力さえあれば、若いうちからバリバリ働いてお金と経験を得られることが魅力である。その代わり、いつリストラされるかわからないという不安があるのも事実で、競争も厳しい。

 一方で、「人材の長期育成」ランキング上位のほとんどは、長い歴史を持つ日系企業になった。各企業の口コミ評価では、「人を大事にする」「従業員に優しい」「のんびりしている」といった言葉が頻出する。

「家族的な企業風土は昔から。営業でも、社内で競争するよりは、1人の得意先を皆で手伝う。チームワークで組織の目標を達成するという、いい意味での〝日本らしさ〟がある」。1位となったハウス食品の山本義夫・グループ本社広報・IR部参事役が語る同社の社風は、まさにその典型だろう。

消滅する職種、勝ち残る職種や
入ると損する悪い会社を徹底分析

『週刊ダイヤモンド』3月8日号の特集は「社員の本音47万件で評価 いい会社わるい会社」です。

「いい会社」に入るか、「わるい会社」に入るか。その究極の選択で、その後の人生は天と地ほど変わってきます。しかし、その見分け方は至難の業です。そこで本誌は大手口コミサイトと連携。47万件におよぶ社員の本音を基にして、公表数字から決してうかがい知ることのできなかった「本当にいい会社ランキング」をまとめました。

 さらに、オックスフォード大学が示したレポートを基にして、消滅する職業、勝ち残る職業全115種も紹介します。加えて、銀行、商社の審査担当者の間で必読となっている「危ない企業300社リスト」の責任者や、有名私大で指導にあたる経営学者に協力を仰いで、入ると損をする悪い会社・業界を徹底分析しました。いよいよ就職戦線が本格化しますが、この特集を参考にして、正しい会社選びを実践してもらえると幸いです。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口 圭介)