もう一つ、興味深いデータがある。一般に「子ども」というと、幼児からせいぜい高校生くらいまでを思い浮かべるだろう。だが、「子どもの定義を『親が存命である』とすると、現在の日本の子どもの平均年齢は約33歳になる」(青木所長)という。

 そう考えれば、親子関係は33歳を中心に上下の世代に広がる。典型的な30代の若い夫婦と子どもだけでなく、親元にパラサイトする独身者、介護の話題が現実味を帯びてきた中高年と後期高齢者の親子関係、孫にランドセルを買ってやるジジババ……。高齢化が進んだ昨今は、子どもの還暦を老親が祝うという構図すらあるという。
「自分たちの顧客を知る」というのは、あらゆる企業、職種に求められるビジネスの基本だ。顧客中心主義の下、実際にお客と接する営業マンや販売員はもちろん、商品開発や販売企画、製造部門まで、あらゆる人々が顧客を意識することを要求されている。

 しかし、日本を取り巻く大きな社会変化を見ないまま、ステレオタイプの消費者像を描いていることで、お客の真のニーズを拾い損ねている可能性はないだろうか──。

 

消費者はうそをつく
お客のホンネを探る法

 今週号の特集は「お客をつかむ33の新法則」です。

 ここまで引用した記事からもおわかりのように、社会構造や家族形態の変化から、従来の分類では今の消費者は補捉し切れなくなっています。なかなか実像をつかめない消費者のニーズを知るために、アンケートやグループインタビューをすることも多いでしょう。

 ところが、困ったことに、消費者はうそをつきます。見栄を張ったり、いいかげんに答えたりもします。何より、人は自分が理解している範囲しか答えられないから、自分でも気づかない潜在的ニーズまで披露してくれるはずもありません。

 そのため、いくら大規模なアンケートを実施しても、上っ面をなでたような結果にしかならず、実際には存在しない架空の消費者像がひとり歩きします。こうして、誰にも見向きもされない商品が世に出ていくわけです。

 本特集では、ありがちな誤解や新たな消費者像について考察するともに、お客のホンネや深層心理を探るための最新の科学やツールなども紹介し、新しいお客のつかまえ方を探ります。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)