「漁協の同意が取れたら、すぐ申請します」官房長官の菅義偉は、首相の安倍晋三にこう耳打ちした。「申請」とは米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移転先となる名護市辺野古沿岸部の埋め立て許可申請のことである。安倍は3月15日に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を決断したばかり。矢継ぎ早の決断の背景には、安倍の日米同盟強化に懸ける意気込みと同時に、菅との絶妙なコンビネーションがあった。3月22日午後3時50分すぎ、沖縄県庁に沖縄防衛施設局から段ボール箱に詰められた申請書類の山が運び込まれた。受理は午後4時。菅の計算通りの展開である。安倍はホワイトハウスで行われた先の日米首脳会談で、米大統領オバマに普天間問題を前に進めることを約束していた。1996年の返還合意から既に17年。東アジアにおける安全保障環境は中国の台頭、北朝鮮の核実験など激変した。それに合わせて在日米軍の再編計画が発表されたが、普天間問題が立ちはだかり再編は遅々として進んでいない。 主な理由は、在日米軍基地の4分の3が沖縄に偏在しているにもかかわらず、負担の軽減が一向に進まないこと。沖縄が重い負担と犠牲を強いられてきた戦前からの歴史。さらに民主党政権の迷走。とりわけ元首相、鳩山由紀夫の普天間の移転先をめぐる「最低でも県外」発言。沖縄県民の期待を高め、逆に混乱に拍車をかけた。

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