落ちた名門が選んだのは
「一流」を捨て「三流」として生きる道

 『週刊ダイヤモンド』6月3日号の第一特集は「三流の東芝 一流の半導体」です。「一流」を捨てて「三流」として生きる。それが落ちた名門の選んだ道でした。不正会計、巨額損失、債務超過、決算延期、そして上場廃止へのカウントダウン──。次々と迫り来る資本の激流にのまれた東芝は、自らの生存を維持するために主力事業や優良資産を切り売りし、いまや「三流」に転落してしまいました。

 東芝の混乱を助長しているのが、大手銀行や大手監査法人、国会議員など「東芝シンドローム」を発症したエリートたちです。彼らが東芝をめぐって動けば動くほど、東芝の混乱に拍車が掛かる、何とも厄介な症候群です。

 そして「新生東芝」とは名ばかりの「三流東芝」は今、生き残りの絶対条件として、ただ一つ残された「一流」の半導体事業をも売却しなければならなくなりました。

 皮肉にもこのドル箱事業には、世界中の大物経営者が食指を動かしており、争奪戦の様相を呈しています。

 台湾のチンギスハンことEMS世界最大手、鴻海精密工業のテリー・ゴウ会長や米国のリストラ屋、半導体世界大手ウエスタンデジタルのスティーブ・ミリガンCEOらが水面下でつばぜり合いを繰り広げている真っただ中です。

グーグルやトヨタも参戦!
半導体めぐる新たな覇権争い

 凋落する東芝とは裏腹に、半導体の世界は沸騰しています。兆円単位の巨額買収が相次ぎ、ここ2年で20兆円が飛び交いました。

 爆発的にデータ需要が伸びるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、自動運転がけん引する新時代の到来を予見し、次の半導体覇権をめぐる争いの火ぶたが切られたのです。

 プレーヤーは従来の半導体メーカーに限りません。半導体を自ら開発して画期的なサービスを生み出したいグーグルや、イスラエルの半導体メーカーを買収したアマゾン、いまや大手半導体メーカーでもあるアップルなど、米IT業界の巨人たちも参戦しています。

 さらに、自社でも半導体工場を持ち、技術者も抱え込むトヨタ自動車がAI半導体の米エヌビディアと組んだかと思えば、劇的進化を遂げる中国勢まで入り乱れ、まるで異種格闘技戦のようです。三流の東芝と一流の半導体。その最前線を切り取りました。