半導体の得意先市場が、時代とともに変遷するにつれ、競争は総合半導体メーカーという単一民族同士の相撲から、出自も肌の色も違うプレーヤーがひしめく異種格闘技戦に変わった。

 総合半導体メーカーのインテルがファブレスを買収し、ファブレスのクアルコムが総合半導体メーカーを巨額で買うM&Aは、まさにそれを象徴するものだ。

 パソコン時代の覇者はインテル、スマホ時代の覇者はクアルコム。では次の時代の覇者は誰か。最右翼はアマゾン、グーグルなど、米国のITジャイアントたちだ。

アマゾンもソフトバンクも半導体に夢中

 16年。本から家電まで何でも売るアマゾンの商品に新しく加わったものがある。半導体だ。「アルパイン」と名付けられたこのプロセッサーを、デジタル家電メーカーやデータセンター向けに販売するという。15年に買収したイスラエルの半導体メーカーによる開発だ。

 アマゾンだけではない。グーグルは、すでに自社でデータセンターおよびAI(人工知能)向けの半導体を開発、囲碁ソフトや翻訳サービス等に利用している。

 日本勢の代表格は、ソフトバンクだ。スマホのCPUの設計ライセンスで寡占的なシェアを握る英ARMを3.3兆円で買収して話題になったが、AIチップや自動運転用の半導体の有力企業、米エヌビディアにも投資していることが明らかになった。ARM買収で狙うのは、車載にもデータセンターにも使えるARMコアプロセッサーを普及させることで、自社が自動運転やIoT(モノのインターネット)のインフラの覇権を握ることだという。

 そもそも、なぜサービス企業が半導体に向かうのか。一言でいえば「半導体を自社で開発しないと、将来自社の命運を握る革新的なサービスが実現できない」からだ。

 現在のデータセンターでは、そのほとんどにインテル製のMPUで動く従来型のコンピューターが使われている。だが、AIや自動運転に必要な能力を満たすことは、既存のコンピューターではもう限界になってきているのだ。

 これまでの「半導体の上得意」が自ら半導体に手を伸ばしているのはそれが理由だ。

 半導体業界の異種格闘技戦を制するのは果たして誰なのか。

 一つ言えるのは、この2年間に相次いだ高額M&Aの影響で、半導体株はITバブル以後最高値の高騰状態にあるということだ。

 現に米ウエスタンデジタルなどは巨額買収の後に財務状況が悪化。M&Aで消耗してその後の投資が維持できなくなるのは、半導体メーカーとしては命取りだ。

 となると、潤沢なカネを生む本業を持つサービス企業など、他の業種から新たに参入してきた企業が、この乱戦を制する可能性は高まる。30年の半導体ランキングの上位をグーグルやソフトバンクが占める──そんな未来はあながち、笑い話ではないかもしれない。