『週刊ダイヤモンド』11月19日号の特集は「中高一貫vs地方名門 最強の高校」。知れば知るほど奥深い、高校の校風や歴史が生み出す人材、人脈、結束力、そして大学合格力の最新事情を全88ページでお届けします。

 慶應義塾大学卒の銀行人事担当者はある晩、気になる場面に出くわした。

 会社近くの飲み屋に入ったところ、東京大学、一橋大学、早稲田大学、そしてわが慶應大というバラバラの大学出身者が、行内の所属部署も異なるのに、それはもう親しげに、楽しげに、語らい合っていたのである。

 彼らに共通するのは、いずれも今後もっと出世するだろう〝有望株〟であるということ。それだけに何でつながっているのか、社内で何らかの勢力や一派があるのか、人事という立場からも気になった。

 耳を澄まして聞き入ると、「赤」だの「黄」だのと、色を言い合っている。どうやら学生時代の運動会に関する話のようだ。

 調べてみると、全員が都内にある中高一貫校、開成高校の卒業生だった。

 全て生徒の手によって運営される運動会は開成の一大行事。新入生は入学して早々、先輩から徹底的な指導を受け、高校3年生は責任の重い役割を担い、「開成生の魂はここにある」と熱弁する卒業生は多い。

 初めて会う同窓生と自己紹介し合うときは、「卒業年次」の次に「運動会のチーム色」、そして「高校3年生のときの役割担当」を確認し合う。中学1年生指導の責任者である「中1チーフ」など、何を担当したかで、初対面でもおよそどの手の人物なのか想像がつくのだ。

 運動会のチームは学年横断で編成され、卒業後も学年を超えて付き合い続け、チームで飲むというOBもいる。

 開成は1982年以降、東大合格者数で35年連続トップの座にいる。開成に続くのが、筑波大学附属駒場高校(筑駒)、灘高校、麻布高校である。

 そして、特に注目してもらいたいのは、下表にある34年間の東大累計合格者数である。東大に合格した卒業生の厚み、つまりストックを見るために、83年以降の東大合格者数を足し合わせた。

 これが何を意味するか。

 東大合格者数の厚みを「高校が輩出した東大卒業生の厚み」として捉えてみよう。

 東大卒業生は長年、日本の政官財で影響力を持ってきた。東大卒の累計数が多いということは、政官財で影響力のあるその高校のOBが多いということになる。

 高校が持つ東大合格者数の厚みは、名門の証しであり、力の源泉である。累計合格者数でも開成は断然トップ。そして灘、麻布、筑駒の順で続いている。

 開成らが台頭する以前、67年までは都立の日比谷高校が合格者数でトップに君臨し、高校最大の学閥ともいわれてきたが、そこから一気に凋落。ところが2016年には44年ぶりに50人を突破し、復活してみせた。

 また、首都圏では新興の渋谷教育学園幕張高校(渋幕)が東大合格者数を急伸させ、進学校として成り上がっている。

 この日比谷と渋幕は東大累計合格者数で20位までに入っていない。今はまだ閥をつくれるような厚みが足りないということだ。

 東大出身者は数が多く、大学単位で結束する力はあまり強くない。とりわけ、東大卒の多い霞が関の各省庁は、東大卒が当たり前の世界である。

 また、大学入学までに、すでに学生は人格形成が成されているもの。だから大学の歴史や教育が人間形成に影響を与えるという話はあまり聞かない。東大卒たちに自身の人脈や人格をつくったのが何かと問えば、「高校」と回答する者が多い。

 高校は1学年の卒業生が数百人レベルなので、大学よりも規模ははるかに小さい。「学閥の王者」と呼ばれ、小学校から大学までを擁する慶應のOB組織「三田会」のような規模は持てない。

「三田会の結束力も結局、幼稚舎(小学校)入学組や中高入学組の結束力が核になっている」と先の慶應卒の人事担当者。冒頭の開成卒たちの飲み会にも「われわれのような、強い結束力を感じた」(同)という。規模だけで語れないものが高校OBネットワークにはある。

 地方の政官財では、東大だけでなく、地方にある旧帝国大学(北海道大学、東北大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学)の累計合格者数を見ると、高校の勢力を捉えやすいだろう。

知れば知るほど奥深い 校風や歴史が生み出す人材、人脈、結束力

 『週刊ダイヤモンド』の11月19日号の特集は「中高一貫vs地方名門 最強の高校」です。

 きっかけは本誌5月28日号の特集「学閥の王者 慶應三田会」でした。この特集取材で慶應義塾のOB組織である「三田会」のパワーを目の当たりにしました。

 と同時に、気になったのが出身大学による学閥とは異なる、高校OBネットワークという存在。三田会取材中、慶應義塾大学の付属高校だけでなく他の高校名がたびたび話題に上ってくるのです。

 さすが三田会。その情報収集力、情報網で他校についてもよく知っている。「三田会の結束力も結局、幼稚舎(小学校)入学組や中高入学組の結束力が核になっている」と慶應OB。それならばと、全国に広がる高校、その卒業生に向き合う特集に挑みました。

 人気の中高一貫校も伝統校も、東京も地方も、私立も公立も、それぞれの校風や歴史が生み出す人材、人脈、結束力は、知れば知るほど奥深い。大学合格力の最新事情も注目材料が目白押し。

 もっともっと載せたいのが本音ですが、選りすぐって全88ページ。巨弾特集をお届けします。

 

 

 

2016年11月19日号[ 710円 ]

表紙
特集

中高一貫vs地方名門 最強の高校

【Prologue】
最強の高校はどこか
【Part1】
高校の魂が日本を動かす
 【Part2】
地方を牛耳る名門校
 【Part3】
その道を究める高校
【Part4】
大学合格力の最新序列
 【Part5】
大学付属校の逆襲
【特別付録】
卒業生&教育方針
全国名門128校リスト