それと時を同じくして、毎年のように富裕層たちが海外移住を進めている。そこで、出国税開始までに海外移住した上場企業の大株主を公開情報から調査したところ、下表のように10人以上が日本を離れていたことが分かった。

 無論、中には仕事の関係で移住したり、その後すでに帰国したりした人物も含まれるが、この中に日本の“富裕層いじめ”に嫌気が差した富裕層がいても何ら不思議ではない。

 もっとも、出国税導入後も国内に残ることを決めた富裕層たちは、「これまで築き上げた自らの信用や評判を落とすリスクを避けるため、富裕層であればあるほど極端な節税は好まなくなっている」(プライベートバンカー)という。

 富裕層に関する国際税務に精通する八幡谷幸治税理士も、ルール上はグレーでも「税務当局に悪質だと判断されれば、仮に裁判で負けてもいいという覚悟で一斉調査に入られることも起こり得る」と警鐘を鳴らす。

 富裕層に対する国税庁の管理体制が強化されている現状では、そのリスクがますます高まっているといえる。

節税包囲網に要注意!

『週刊ダイヤモンド』10月24日号の第1特集は、「その節税、ありか、なしか」です。

 ちまたでは、消費税の8%から10%への引き上げや、配偶者控除の見直しが話題となっていますが、増税の荒波はそれだけにとどまりません。実は、ひそやかに“増税包囲網”が形成されつつあります。その筆頭格が富裕層で、冒頭のエピソードにある「出国税」や、来年から始まる「財産債務調書」の提出、数年後に始まる世界各国と金融口座の情報を自動的に交換する「自動的情報交換」などです。そこに、マイナンバー制度の導入も加わり、富裕層の財産は丸裸にされようとしています。

 そして、今年1月から始まった相続税の増税では、基礎控除が4割削減され、最高税率が引き上げられました。この増税は富裕層のみならず、首都圏に一戸建て住宅を持っていれば対象となるほどのインパクトがあります。そして、一般サラリーマンに対しても、各種控除が徐々に廃止され、配偶者控除の廃止すら議論の俎上に載っています。気が付けば、実質可処分所得は大きく減少し、さらに下がる見込みです。そこで、自らの資産を防衛するのに有効なのが、節税というわけです。

 もっとも、節税術を駆使するのは今に始まったことではなく、古くから税の専門家たちが知恵を絞ってきました。中には、法律の隙間を突いた手法や、法律スレスレの手法を編み出してきましたが、それらはことごとく税務当局につぶされてきました。それでも次々に新たな節税術が生まれており、今、一番の話題は「タワーマンション節税」です。詳細は特集に譲りますが、タワマンを購入することで相続税を驚異的に減らすことができます。これは合法的な節税術ですが、あまりの過熱ぶりに、税務当局は無視できない事態となっています。

 では、節税は難しいのでしょうか。そうではありません。政府は、60代以上に偏っている巨額な個人資産を現役世代に移転することで、経済の活性化を図ろうとしています。そのための有効な手段が「贈与」です。政府は、贈与に対する優遇策や新たな制度を続々と拡大していますので、これらの制度を活用しない手はありません。

 他にも、タワマン節税の雲行きが怪しいながらも、やっぱり節税の王道である「不動産」についても多くの誌面を割きました。また、不動産に絡めた節税に走るあまり、資産価値が下がる不動産を買っては意味がありません。そのため、資産価値の下がりにくいエリアをマップに落とし込んでいます。

 それに相続や贈与の万能選手と言われる「保険」や、まだまだ使える「控除」、そして来年から税制が大きく変わる「証券」なども節税に活用できますので、誌面でつぶさに紹介しています。加えて、中小企業のオーナーが頭を抱える自社株の承継問題を解決しながら、節税もできる手法にも踏み込みました。ぜひ、本特集をご一読ください。

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10月24日号「その節税、ありか、なしか?」

Prologue:サラリーマンから富裕層まで増税ラッシュ
不動産編
贈与編
保険編
証券編
サラリーマン編
中小企業オーナー編

 

 

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