超入門
世界一分かりやすい石油の常識

  『週刊ダイヤモンド』2月7日号の第1特集は、「世界を揺るがす原油安 超入門」です。

 昨秋から原油価格の急落が話題となっています。ガソリン価格が過去最長の27週連続の値下がりとあって、週末、車で遠出する家族も増えそうです。

 その背景には、今、何かと話題の原油価格の急落があります。昨年6月に1バレル107ドルを付けた原油価格は、1月にはついに一時45ドルを割り込みました。わずか半年で半値以下にまで暴落するという異常な下げです。

 ガソリンの原料は原油。原料のコストが下がれば、当然、ガソリンの販売価格も値下がりします。

 同じようなありがたい現象は、今後、日本中で起きるかもしれません。なぜなら、原油はあらゆる化学製品のタネ。消費する原油のほぼ100%を輸入している日本にとって、原油価格下落は輸入コストの減少に直結します。その恩恵がさまざまな商品の販売価格に及ぶというわけです。

 食卓に並ぶ野菜や魚介類にも影響は及びます。農家のビニールハウスで使われる暖房機器や漁船の燃料は主に重油。産地から小売店までの輸送コストも、ガソリン価格下落で削減されるからです。

 販売価格の下落によって消費が刺激されれば、日本経済にはプラスです。この波が企業業績の回復、給料アップ、株価アップへとつながれば、景気回復の現実味が増します。

 ところが、足元では経済にマイナスの影響を及ぼすリスクが指摘されています。

 元凶は産油国の経済にあります。産油国は、原油輸出が国の財政の根幹。原油価格の下落は財政赤字に直結し、通貨は一斉に売られます。

 この現象が実際に見られたのが世界第2位の産油国であるロシア。同国通貨のルーブルが14年11月に急落したのです。

 そのマイナスの波は国境を越え、グローバルにつながった金融市場を通じて、産油国から新興国へと一瞬で伝播しました。さらに巡り巡って先進国、ひいては世界経済に甚大な影響を及ぼす可能性もあります。世界同時株安という事態になれば、日本も人ごとではなくなります。

 今、世界各国の経済にはプラスとマイナス両方の波が同時に押し寄せています。

 日本経済にとってはどうでしょう。「中長期的には間違いなくプラス」(嶋津洋樹・SMBC日興証券シニア債券エコノミスト)だが、「金融市場に混乱が起これば短期的にはマイナス」(丸山俊・BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト)との見立てが多いようです。少なくとも今年の夏ごろまで、両方の波に揺さぶられることになりそうです。

 どこまで下がるのか。反転タイミングはいつなのか。そして世界経済にはどんな影響が出るのか。世界一わかりやすい〝原油学〟をお届けします。