まず点在していたアトラクションを集めて小さな子供向けのアトラクションがそろう「ユニバーサル・ワンダーランド」を立ち上げた。ガンペル氏は社長就任後に映画のテーマパークを意味する「パワー・オブ・ハリウッド」から、「ファミリー・エンターテインメント」へ戦略を変更しており、それを具現したものだ。子供にとって怖くても、大人にとって面白い尖ったアトラクションを展開する米国のユニバーサル・スタジオのコンセプトを根本から覆すものだった。

 テーマパークは通常リピートしてくれる層を狙う。幼児が居るファミリーという入れ替わりのある層を狙うワンダーランドは、マーケティング的には紙おむつビジネスと重なる。

 毎年日本で100万人の新生児が生まれる。そのうちの2割が関西。新生児1人が入場すれば、親たちを含め入場者は3〜4人に膨らむ。新戦略はつまり毎年70万人が生まれる市場を取り込むものだった。

 ワンダーランドは成功し、そこで稼いだカネがハリー・ポッターエリアを生み出した。森岡氏は「まるでわらしべ長者」と表現するが、要は自転車操業でカネをつないでいったのだ。

「テーマパークの一番えぐいことは資本が掛かり過ぎること」と森岡氏。ディズニーが100億円掛けてジェットコースターを造るなら、「USJは70億円でできる」。ワンダーランドもまさにそれ。技術指導料を払わないよう、独自で開発を行って費用を抑え込んだ。

 このほかジェットコースターを後ろ向きに走らせる「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド バックドロップ(逆さライド)」や、人気漫画作品である「ワンピース」や人気ゲームの「モンスターハンター」など、巨額投資を抑えたアトラクションやイベントを矢継ぎ早に仕掛けた。

 ハリー・ポッター開業初日には3000人が詰め掛けた。経済波及効果も大きく、JTBでは今年の夏の関西旅行のパッケージ商品が前年同期比6割以上も伸びた。

 当のUSJはハリー・ポッター効果を受け、14年度の入場者数は1200万人を狙う。

 直近の営業利益率は24%。キャッシュベースでの利益水準を算出したEBITDAマージンは36・2%。TDRを経営するオリエンタルランドより圧倒的に高い数値という。

 死のふちをさまよった現在のUSJは、「三セクの烏合の衆とは違う」と言ってのける森岡氏。

「テーマパークは、ある一定の集客を超えると面白いようにもうかる。今、天国を味わっている」

ディズニーからUSJまで
勝ち残る経営の神髄に迫る
最強のテーマパーク特集

「週刊ダイヤモンド」8月9日・16日合併号は「最強のテーマパーク」を特集しました。

 テーマパーク業界には「東西2強」と呼ばれる存在があります。東の横綱はテーマパークの元祖、東京ディズニーリゾート(オリエンタルランド)。西の横綱は450億円を投じた「ハリー・ポッター」エリアが7月にオープンしたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)。この2強が入場者数で桁違いの強さを見せています。

 優等生ディズニーが徹底したこだわりと巨額投資でつくる夢の国、商売人USJが「面白ければ何でもあり」とばかりにケチケチ投資で造る「ファミリー・エンターテインメント」。特集ではその世界観創造の舞台裏からもうけのカラクリまでを徹底解剖し、次なる拡張計画の中身も明らかにしました。

 カネをかき集めて絶叫マシンなど大型アトラクションをどんどん導入していればもうかるような時代ではありません。2強を追う第3勢力、独自路線を貫く地方パークまで、勝ち残る経営の神髄に迫りました。

 アトラクションに乗って楽しむのとはまた違う興奮を本特集で味わっていただければ幸いです。

2014-08-09

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本誌2014年8月9日号

「最強のテーマパーク」

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