5年後は暗黒時代
世界中で類のない
人口急増社会の到来

 5月、有識者などで構成される政策提言組織「日本創生会議」(座長・増田寛也元総務相)の人口減少問題検討分科会が公表したリストが、全国に衝撃を与えた。

 若年女性(20~39歳)人口が、10年から40年までの間に半分以下になるという「消滅可能性都市」が、全国1741自治体のうち、過半数の896自治体に上ると推計されたのだ。名指しされた自治体はもちろん、政府も対応を迫られた。

 6月13日、政府は「骨太の方針」の素案において、最重要課題として「人口急減・超高齢化社会」対策を掲げた。

 その中では「50年後も1億人程度の人口を保持する」とし、「20年をめどに、人口急減・超高齢化の流れを変える」と、大風呂敷を広げてみせたのだ。

「創成会議の推計も極端だが、『人口1億、出生率2%台』という政府の目標は達成不可能。責任がある政府が出す数字ではない」

 そう切って捨てるのは、人口減少問題の第一人者、松谷明彦・政策研究大学院大学名誉教授だ。

「日本の人口減少は制御不能で、100年は減り続ける。むしろ、それを前提に政策を考えるべき」。

 また、奥村主任研究員も対策の具体性のなさに「政府のまやかしに近い。女性や高齢者の活用を叫んだところで、人口全体のパイは縮み、同じ比率でGDPも縮小する。五輪で今はお祭り騒ぎだが、一時的なカンフル剤でしかない。20年以降は、暗黒時代になりかねない」とあきれ顔だ。

 日本の人口減少について、識者は「古今東西、類を見ないもの」と異口同音だ。

 創成会議の推計の基となった国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計・世帯数」(12年)によれば、中位推計でも10年時点の1億2805万人の人口は50年に1億人を切り、69年後の83年には半減する。最悪のシナリオでは、1億人割れは43年と、残り30年もない。

 先進主要国の中で、まさに〝独り負け〟。同じ敗戦国で、日本と同じ人口トレンドにあるドイツでさえ、20年前後を境に、底を打ち回復基調に入るとみられているのだ。

 総人口が減り続ける一方で、東京都だけが人口が増えるという一極化がしばらく続くが、それも五輪が開催される20年までの話だ。

 なぜ、日本だけがそうなったのか? BNPパリバ証券の河野龍太郎・経済調査本部長は、老人医療費の無料化や医療保険の給付率の改善、年金の物価スライド制などが導入された73年の「福祉元年宣言」に原因があるという。

「国民の家族意識を変え、『結婚や出産をしなくてもよい』というメッセージになった。皮肉なことに、社会福祉制度の充実こそが、1人で生きていける社会を生み、婚姻率の低下や離婚率の上昇を招き、人口減少という事態につながった」と分析する。

 生産年齢人口も同様に、日本だけが下げ止まらない中、経済も縮小に向かう可能性が極めて高い。

 人類が経験したことのないスピードで消費人口が減り、労働力人口も減る社会の訪れ。東京五輪開催を控えて楽観ムードも漂うが、将来は決して甘くない。

2025年の産業界を徹底シュミレーション
沈む産業・浮かぶ産業はどこか!?

『週刊ダイヤモンド』7月19日号の特集は、「人口減少ショック 2020年からのニッポン」。20年に東京五輪が決定、アベノミクスの影響もあって、高揚感が日本を包んでいます。

 しかし、前述したように、20年から東京でも人口が減少し、日本は本格的な人口減少時代に突入します。

 そのとき、日本経済はどうなっているのでしょうか。そこで今回、18の業種を対象に、沈む産業・浮かぶ産業はどこなのか25年の姿を探ってみました。

 インフラや医療・介護といった行政サービスも劣化が必至。こちらは30年の姿をシミュレーションしました。

 そして最後に、市町村レベルでの人口減少率・上昇率ランキング、若い女性の減少率・上昇率ランキングを作成しました。お住まいの市町村や出身地の将来はどうなりそうか、是非、ご覧ください。